加えて稼働状況も厳しい。1社・1日あたりの平均稼働台数は11年から25年までで約35%減少し、右肩下がりのトレンドが続いている。
これは、輸送会社の倒産や事業からの撤退、車両価格高騰で車両台数を増やせないことによるものだ。車両価格の高騰は特に深刻だ。最新の安全装置を搭載したトレーラーは10年前の約1.5倍まで上昇し、整備費も高止まりしている。加えて燃料費も15年比で約 36% 上昇し、ドレージ事業者の経営を圧迫する。ある運送事業者は「維持費の高さからドレージ事業から撤退し、今はトラック運送事業に注力せざるを得ない状況になった」とため息をつく。
この減少傾向が変わらなければ、30年には稼働指数は50台前後、11年比で半減近い水準に落ち込む計算になる。年齢構造と稼働台数の双方が示す方向性は一致しており、ドレージ輸送の供給力は構造的に、そして不可逆的に萎縮しつつある。
ある関東の運送会社幹部は「現時点では何とか回している状況。求人を出しても3カ月に1回応募があるかないか。現場はすでに限界で綱渡りの状態だ」とひっ迫した状況を語る。
荷主企業からも「ドレージの確保が年々難しくなっており、フリータイム(港でコンテナを無料で保管できる期間)内に貨物を引き出せず、港での保管料が発生するなど実務に支障をきたしている」との声が相次いでいる。
並び時間の長い特定ターミナルの案件を断る事業者も出始め、表面上は動いているように見えるが、現場の余力は急速に失われている。
現場を追い詰める複合的な要因
では、なぜ事態はここまで深刻化したのか。背景には、日本の物流が1990年代以降の長期デフレの中で一貫して「ドレージをはじめとする物流費用はコスト削減の対象」とされ続けてきた構造的問題がある。「物流費は下げるもの」「安く運んで当たり前」という価値観が産業全体に定着し、人材投資や設備投資は後回しにされた。
この“低価格維持の構造”は慢性的に薄い利益率を定着させ、現場が疲弊しながら支えることを常態化させた。その帰結が、いまの供給力の先細りとして表出していると言えるだろう。


