2026年1月13日(火)

Wedge REPORT

2026年1月13日

 補助金はいわば当座しのぎの「守り」の予算だ。漁業者団体からの強い要求により手厚く配分されている減収補填事業については、過去の漁業からの平均収入に応じて補填されるが、水揚げと収入が右肩下がりになると、それに伴って補填額も右肩下がりになる。資源回復を図らなければ、いずれ漁業を辞めざるを得ない。漁船建造にしても、魚がいなくなってしまえばどうしようもない。

漁獲枠拡大ではない
漁業者のためにすべきこと

 2度にわたる漁獲枠の拡大の背景として、メディアなどでは操業停止となった漁業者が悲鳴を上げているといったことが報じられている。

 しかし、必ずしも漁業者が漁獲枠の拡大ばかりを求めているのではない。例えば青森県の一部沿岸小型イカ釣り漁業者は、「不確実な根拠に基づいた漁獲枠の安易な漁期期間中の増枠は資源の悪化を招く」と、反対の申し入れをしている。

 今回のスルメイカ騒動では、小型イカ釣り漁船が枠を超過したとして採捕停止命令を受けている。しかしそもそもこうなってしまったのは、沿岸漁業者の漁協などの現場レベルで記録されている水揚げ量を迅速に把握するシステムすら構築されていないことに起因している。自らの漁獲枠がどれだけ消化されているかを把握できなければ、漁業者は漁獲枠の調整が難しくなる。

 これまでは実際の漁獲に比べて枠が過大であったため、こうした問題は生じなかったが、資源評価を受けて全体の漁獲枠は24年度の7万9200トンから1万9200トン(増枠前の当初枠)に減らされている。減枠によって問題点が炙り出された。

 「増枠は大規模漁業者であり、他種も漁獲する大型底引き網に配分が偏っているのではないか」というのが沿岸零細漁業者の不満である。近年の不漁により零細漁業者は苦境に陥っており、辞めていく者も少なくない。経営的に体力のある大規模漁業者の配分を減らしつつ、小規模沿岸漁業者をはじめ、皆が生き残れる形をとっていくことが適切だ。

 資源が減り、漁獲量も減少の一途をたどる中、今回のように改正漁業法の下で決められた漁獲枠が覆ってしまったスルメイカの事例は、「悪しき前例」をつくったといえる。

 政治家の圧力により水産庁は後付けかつ科学的根拠の極めて乏しい中で漁獲枠を拡大してしまったからである。しかも、自民党も野党第一党の立憲民主党も、漁業者(団体)の意見のままに科学的根拠なき枠拡大を推し進めた点では一致している。改正漁業法の精神はどこへ行ってしまったのか。


新着記事

»もっと見る