2026年5月20日(水)

日本の農業論にモノ申す

2026年5月20日

ハワイの事例:高度な専門性と技術的伝道者

 アメリカの普及事業は、世界的に高い技術力と生産性を支える仕組みとして知られる。日本との共通点もありながら、異なるアプローチで高い成果を上げている。

 まず、普及事業は各州の大学が管轄している。この点は、日本の普及事業が都道府県を主体にその研究機関などと連携の下で実施されている点と似ている。

 ハワイの普及員はハワイ大学の職員であり、その多くは修士課程を修了するなど、極めて高度な専門知識を持つ。大学で開発された最新技術に触れる機会も多く、その技術を農業者に伝える側面が強いと言える。単なる指導者でなく、高度な専門性を持つ技術者である。

 普及事業を支援するハワイ大学熱帯農業・人材レジリエンス学部副学部長のケビン・オリバル博士と筆者

 26年3月、筆者がハワイ大学の関係者と面談し、普及現場を訪問する機会を得た。この時、会った普及員が、ジェンセン・ウエイダさんである。

ジェンセンさんによる自作灌水装置(筆者撮影)

 彼は大学の園芸センターに駐在し、そこに実証圃場を設置して、実証技術の指導もしている。筆者が日本のスマート農業の現状を説明すると、ジェンセンさんが「ハワイの農家も大多数が中小農家で、私たちはその支援をしている」と切り出した。

 ジェンセンさんは中小農家向けの自動灌水装置の試験運用や、ホームセンターで購入できるキットを用いた簡易ハウスの展示など、農家が実物に触れて、具体的に導入を検討できる実践的な指導を行っている。

ホームセンターのキットを組み合わせた防虫目的のハウス(筆者撮影)

 ジェンセンさんによると、生成AIツールのPerplexityを日常的な指導で使い、現場で植物の状況などを確認する。「普及指導に使う場合は、必ずファクトチェックをしている」とのことで、指導の正確性を担保している。ハワイでは若手を中心に「普及員の2割ぐらいは生成AIを利用している」そうだ。

 日本では生成AIの回答が不正確であるリスクを考慮して普及活動での利用はまだ十分に進んでいないのが現状だ。

 このように、専門性と実践に基づいた指導スタイルは、農家からの信頼を獲得する鍵となっている。


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