「なぜそうなるのですか?」の質問に「AI先生が教えてくれた」という回答が返ってきた。まるで生成AIを教師のように錯覚して、答えをすべて信じ込んでしまうのだ。
本来なら、まず自分で仮説を立て、観察と照らし合わせて確かめるという訓練を積むべき時期に、その過程が省略されてしまう。これでは、自分で観察して考えるという力が育たないであろう。農業を担う若者がこのような習慣を身に付けてしまえば、農業の将来にとって、決して小さな問題ではない。
AIエージェントの時代だからこそ必要な視点
これからはAIエージェントの時代と言われる。AIエージェントは、生成AIのように質問に答えるだけでなく、与えられた条件に基づいて資料を作ったり、データを分析したり、アプリを作ったりするところまで進んでいる。
例えば、農作業において重要な情報となる天気予報は、一般的なサービスでは市区町村など一定のエリアを対象として表示されることが多い。それが、AIエージェントを活用すれば、圃場の位置情報などに対応した気象データを取得し、農作業に必要な情報を表示するアプリを農家自身で作成することもできる。
このようなアプリを使った農家からは、「圃場周辺の天気予報が当たり、助かる」との声が届いている。ただし、このようなアプリを自分で作成している農家は少数派だ。
またAIエージェントを農業で使う場合には、生成AIに問う以上に、条件を丁寧に伝えることが求められる。いま作物がどのような状況にあるのか、どんな環境で栽培しているのか、手元の機器やデータはどうなっているのか、などの前提を正確に伝える必要がある。
実はこのような手続きはアプリ開発の手順と基本的には変わらない。AIエージェントを活用することでプログラミングの一部を自動化でき、これまでよりアプリ開発の敷居は大きく下がっている。しかし、十分な指示をしないと、AIエージェントが限られた情報の中で独自に判断し、思わぬ方向へ作業を進めてしまう危険性がある。つまりAIエージェントが行っている作業の過程がブラックボックス化している。
一方、結果を検証した上でそれを修正したり、ミスを直したりするにはそれなりの手間と知識が必要になる。仕事の手順化と検証が重要であることはAI普及前と何も変わっていないのだ。

