この点について、普及指導員のOBら、長年現場を見てきた専門家に尋ねると、次のような答えが返ってきた。
「そもそも作物を育てる基本は、生育をじっくりと見ることにある。葉の色、茎の太さ、株全体の姿などを自分の目でしっかりと観察し、その特徴を読み取る。場合によっては近隣の圃場の状況を観察する。この「観察眼」そのものを、時間をかけて養っていく必要がある」
生成AIに聞く前に、まず作物を見る。この順番を逆にしてはいけないというのだ。
ベテランと言われる農家が一目見ただけで作物の異変に気づけるのは、この経験に裏打ちされたノウハウの蓄積があるからだ。
ところが、経験が浅い上に生成AIに依存しすぎると、じっくり見る前に写真を何枚も撮り、それを次々と生成AIに聞くという行動に陥りやすい。観察して考えるという最も肝心な過程が、そっくり抜けてしまうのである。
生成AIは「与えられた情報」からしか判断できない
そもそも、生成AIは基本的に与えられた写真や質問などの情報をもとに判断し、回答を導く。作物の生育が悪いのが病害虫によるものなのか、水不足によるものなのか、あるいは肥料や土壌の問題なのか、経験豊富な普及指導員でさえ、その場の一枚の写真だけでは、判断がつかないことが多いという。
生成AIは、情報が不足していても、その限られた情報から回答を導き出そうとすることがある。
たとえば、雑草も小さい時は、専門家でも判別が難しいのに、生成AIは1枚の写真から答えを出してくる。
生育不良の背景には、天候の推移や水管理、これまでの栽培履歴といった、写真には写らない理由や条件があるはずだ。部分的な写真を撮って生成AIに聞く、つまり十分な判断材料を生成AIに提供しないで使えば、もっともらしいが的外れな答えが返ってくる可能性が高い。
それを信じて作業すれば、思わぬ結果を生みかねない。生成AIを農業現場で活かすには、正しい使い方をすることが不可欠なのである。
同じような光景は、他の場面でも目の当たりにした。農業を学ぶ学生が、自分で考える課題を与えられた時、考える前に次々と生成AIに聞き、その回答を鵜呑みにしてしまう。

