ただし、ロシアを軽視するのは時期尚早だ。ロシアの科学者達は、ウクライナの現在の技術的優位性に対抗する効果的な手段を見出すかもしれない。
ロシアの指導者は、幾度となく予想外の外交的勝利を収めてきた。核兵器やサイバー戦、ハイブリッド戦、情報戦における能力といったロシアの資産を活用し、いまも国際情勢を再びロシアに有利な形へ傾ける方法を模索し続けている。
しかし歴史の法則は最終的には容赦なく作用する。ロシアの人口減少、世界水準に達しないハイテク産業、冷戦終結以来の経済的失敗、東方における中国の台頭、そしてキルギスタンからウクライナに至る旧ソ連諸国におけるナショナリズムの継続的な高まりは、いずれもロシアの国際社会における地位を弱体化させている。
中国は、中央アジア諸国を自国の支配下に引き込もうとする一方、かつて帝政ロシアに奪われた領土の奪還を模索するかもしれない。トルコは、バルカン半島と中東における経済的・政治的影響力の拡大を目指すだろう。プーチンは、ロシアを再び超大国に復活させることを望んでいたが、彼の後継者たちは、より控えめな目標で妥協せざるを得なくなる可能性がますます高まっているようだ。
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度々使われる「核の威嚇」
ウクライナ戦争は本年春頃からロシアの劣勢が目立ち始め、ロシア国内の経済的・社会的混乱は回復の見通しが立たず、ロシアを巡る戦略環境は悪化し続けている。今の状態が続けば、ロシアは国際政治における超大国としての地位を失うことになるだろう。ミードの指摘には賛同できる。
ただ、これは大きな歴史の流れを展望したもので、そこに至る過程で何が起こるかは別問題だ。ロシアが衰退に向かう道は一本道ではない。そこでは、恐らく次のような事態を乗り越える必要があり、これらが重要な課題となろう。
第一に、最も可能性の高いのがプーチンによる「核の脅し」だ。プーチンはこれまでも、一般的な核の脅しはかけ続けてきた。ウクライナ全面侵攻を開始した2022年以降、毎年実施する「核兵器の使用を想定した演習」、23年の「新戦略兵器削減条約(新START条約)の履行停止」表明、ウクライナ攻撃における核・非核両用ミサイルの多用、その他メドベージェフ安全保障会議副議長など政府高官による「核の威嚇」発言等がある。
しかし、ウクライナにおける占領地を大幅に失いそうな事態になった場合には、さらに、実際の核使用の準備に入ったと米国等に信じ込ませるに足る具体的動きを開始するだろう。22年秋、ロシアはハルキウ州ヘルソン市を奪還される事態に陥っていたが、そのような中で米国家安全保障局(NSA)はロシア軍高官が戦術核の使用について協議する内容を傍受した。当時のバイデン政権は、ロシアを思いとどまらせるため強い警告を発した。
