2026年7月16日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年7月16日

 これは、核使用に向けたロシアの動きに対し、米国が如何に敏感に反応するかを示す「先例」となった。ロシアとしては今後、同様の動きを見せて米国の強い懸念を呼び起こした上で、核使用を控えることの「対価」を求める作戦に出る可能性がある。その場合には、ロシアとの「神経戦」を戦う意思を米国がもつことができるのか、それともロシアが求める「アメ」を与えることで安易に収めようとするのかが問われることになる。

 第二は、中国の動きだ。中国は、ロシアの決定的敗北という状態が視野に入ってくれば、これを避けるべくロシア支援を強化する可能性が高い。その場合、ウクライナによる優勢は相当に相殺され、戦況はまた膠着状態に戻ることになるかもしれない。問題は、仮にロシアの劣勢を受けて中国がロシア支援を強化し、そのため紛争がさらに長期化しあるいはロシアの逆転勝利というような可能性が出てきた場合に、これを阻止する効果的な措置をとれるかどうかということだ。

欧州は支援を続けられるか

 第三は、ロシアが欧州に対する挑発行為やハイブリッド戦を強化する可能性だ。これは欧州諸国にウクライナを支援し続けることのコストを認識させることで、資金面をはじめとするウクライナ支援を細らせていくことが狙いだ。

 この動きは既に開始されている。防衛生産インフラへの攻撃、選挙介入、海底ケーブルの切断、エネルギー・パイプラインの損傷、サイバー攻撃、放火、果ては難民の「武器化」まで様々な手段で欧州の「ウクライナ支援疲れ」を増長させ、各国の政策へと反映させる工作が進められている。また、バルト三国やポーランドをはじめとする欧州諸国へのドローンによる領空侵犯なども度々行われている。

 これは、「ウクライナを支援している限りロシアによる攻撃のリスクがあるが、北大西洋条約機構(NATO)はあなた方を助けないよ」というメッセージで、NATO条約第5条の有名無実化を狙った行為だ。今後、軍事的な余力のないロシアは益々ハイブリッド戦に依存しようとするだろう。欧州政府、国民はこのようなロシアの動きに対する抵抗力を一層強くすることが求められる。

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