2026年5月26日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年5月26日

 トランプはロシアを米国と対等の大国として扱うつもりは全くなく、ロシアに勢力圏を認めたりするつもりもない。モスクワは、より混沌とした、安定した枠組みも信頼できるルールもない世界と向き合わなければならないだろう。

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プーチンの国内での立場の変化

 上記の論説の言うとおり、トランプの登場はプーチンにとって決して好都合ではなく、戦略環境はむしろプーチンに不利に形成されつつある。プーチンが長年にわたり米欧に求めてきたことは、「大国に相応しい地位」を与えられることであり、グローバルな「勢力圏」分割の主体者になることであった。

 これがトランプによって、あっさりと否定されている。今日、プーチンが直面する国際環境の現実であり、プーチンは戦略的な劣勢に立たされている。

プーチンにとって厳しいのは国際環境だけではない。国内においても、傾向的な経済・社会情勢の悪化に加えて、以下のとおり、これまで見られなかった質的な変化が起きている可能性がある。

 まず、指導部内の勢力均衡の持続性について。5月初め、「欧州情報機関」の評価を引用して、昨年末に治安機関の代表者らがプーチン大統領の前でロシア軍最高幹部に対する警護の失敗について激しく非難し合ったとする記事が、欧米ならびにロシアの独立系ニュースサイトで拡散された。報道の真実性は不明だが、完全にありもしない話として捨て去るには、余りに詳細な記述となっている。

 同会議の焦点は、当然ながらプーチン自身の警護にあったはずで、その中で露軍幹部の警護に対する「非難合戦」や「責任のなすり合い」が漏洩されたということは、プーチン自身の警護に対する責任の問題も未調整のまま推移している可能性を示唆している。

 もともとプーチンの統治手法は政府部内、特に「力の省庁」については互いに競合させてプーチン自身が最終的な利害調整者となるようにするやり方であったが、この調整が効果的に機能していない可能性がある。背後に「ロシア大統領府vs治安機関」の対立があるのではないか。

 次に、「プーチン批判はしない」との「聖域」が破られつつあることだ。戦況が思わしくなくとも、経済状況がどれほど悪化しても、政府や特定の政治家・閣僚が批判されることがあっても、プーチンは批判の域外にあった。ところが本年3月頃から、政権のみならずプーチン個人に対して、しかもこれまでプーチン支持のプロパガンダを担ってきたインフルエンサーらが、名指しで批判し始めた。

 さらに、新たな措置による国民の不満の高まりがある。不満はこれまでもあったが、本年になって政府が新たに取った措置に関連して、さらに膨らんでいる。


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