2026年3月15日(日)

田部康喜のTV読本

2026年3月15日

東電の「失敗の本質」は?

 社会学者の関沼博さんが、大いなる懸念を表明した問題はどうなるのか。

 実は、東京電力の社内のなかで、関係者の膨大なインタビューと記録がたゆまなく蓄積されていた事実はあまり知られていない。東電では主に経営企画や営業畑を歩んでいた、小池明男さん(1987年入社)は、事故直後から経営陣を補佐しながら、社員意識や組織改革に取り組んだ。震災の資料のアーカイブづくりもあわせて進めた。

 18年から事故の教訓を社内に浸透するとともに、継承する全社員研修を始めた。21年に安全啓発・創造センター所長を務めた。22年東電ホールディングス退職後は独立して、「カルチャー変革エバンジェリスト」を務めている。

 事故の原因について、小池さんは経営層や社員たちのインタビューを通じて、事故の原因は「組織文化」にあったという視点に至った。最新刊の『失敗しない「人と組織」 本質的に生まれ変わるための実践的方法』(BOW&PARTNERS)は、ある意味では、吉田さんの技術者的な観点とは異なるところから東電を見つめ直して、出身母体のみならず組織の生成の処方箋となる、洛陽の紙価を高める著作である。

失敗しない「人と組織」  
小池 明男著 
BOW&PARTNERS 
¥2,860 税込

 原発事故や企業の不祥事などの度に引用される、名著『失敗の本質』(戸部良一)がある。この著作は、日本軍が敗戦に至る要因から失敗の原因を紐解いている。

 小池さんの著作は、最近の組織開発や人材育成、リーダーシップ論、教育、心理学さらには合理的な人間を前提としない「行動心理学」などの成果を盛り込んでいる。東電のみならず、さまざまな企業の「組織文化」の改革の書である。

 「組織文化」の変革とは、一人ひとりの意識と行動の変革である、としている。

 原発事故についていえば、「津波や過酷事故に備えるための継続的向上努力を欠いていた『組織文化』が根本原因であり、それも氷山の水面下の深層に隠された思考の枠組みの歪みが問題だった」

 「全体を俯瞰せず部分最適になりがちな社会力学、問題を先送りにしがちなエリートの責任回避姿勢、年功序列・終身雇用の単線路線を当然とするマインドセットなどの日本の社会構造に由来する」

 「組織文化」を変革するにはどうしたらよいのか。

 「組織とその一人ひとりが終わりなき向上努力を決して怠ってはいけない、ということが、最大の教訓です…謙虚に考えて、正しいと思ったら声を上げ、困難があっても果敢に行動に移す姿勢の積み上げが、建設当時から事故に至るまでの歴代の経営層からわたしも含む社員一人ひとりまで、必要でした。本当に悔やまれてなりません」

 「本音の対話を通じて一人ひとりの意識と行動の主体的な変化を促すこと、すなわち組織文化の変革に筆者らは取り組んだのです。…『いかに難しくても、正しいことを正しく行う』という、人としての真摯で誠実な生き方を貫くことでした。…自ら出る杭が集まって、はじめて自律的な組織になります」

 東日本大震災から15年。南海トラフ地震などの大震災が推定され、それにともなう津波対策、そして復興…なによりも、番組の主要なテーマである「核は制御できるか」という難題の解決という教訓をいかにして得るのか、迫りくる次の危機は近い。

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