NHKスペシャル「廃炉への道2019 核燃料デブリとの闘いが始まった」(3月16日、再放送予定・3月21日午前1時~)は、原発事故の廃炉に向けた側面から、調査報道を続けてきたシリーズの今年の報告である。デブリの正体を明らかにするとともに、廃炉作業に取り組んでいる従業員のほとんどが地元の人々であることを示して、彼らの志を伝える。
さらに、最も興味深いのは、デブリの本丸は原子炉格納容器ではなく、原子炉そのものに大量のデブリが存在する可能性が高いことを明らかにしたことである。
「廃炉への道」シリーズのなかでも、出色のドキュメンタリーである。再放送は深夜にわたるので、録画による視聴をお勧めしたい。
デブリが存在する本丸は?
東京電力福島第1原子力発電所は、1号機と2号機、3号機がメルトダウンして、格納容器の底にデブリと呼ばれる金属が解けた物質が溜まっている。「廃炉への道2017」では、デブリを探るロボットの開発試験と、デブリを冷却したあとの大量の汚染水を貯めておく巨大タンクに実態に迫った。
東日本大震災から8年目に当たって、原発事故によって避難をよぎなくされた住民の声と、デブリの状態を映しだした映像が、新聞とテレビなどのメディアで繰り返された。
今回のシリーズは、継続してきた原発事故の調査報道の実績の上に、新たな問題を浮かび上がらせた。メディアが伝える「デブリ」という漠然とした言葉が、その正体を現した。
2号機の格納容器に対するロボットによる調査が、今回の白眉である。ロボットは、格納容器の横から管を貫通させて、そのなかを這うように進ませたうえで、下部に降ろされた。採取された金属の分析によって、原発の運転具合を調整する制御棒と、これを包むチャネルボックスであることがわかった。
つまり、核燃料ではなかったのである。専門家は、核燃料の融点が2000数百度であるのに対して、制御棒やチャネルボックスの融点は1500度程度で相対的に低いことから、後者が先に溶け落ちたと推定している。
となると、格納容器内のデブリの正体がそのようであるとすると、格納容器の上部にある原子炉こそ、核燃料などの高い放射線を放つデブリが存在する本丸である可能性が極めて高い。