2025年1月26日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年12月11日

 11月7日付Economist誌の解説記事が、プラボウォ・インドネシア大統領の訪中・訪米と、インドネシアの対中傾倒につき論じている。要旨は以下の通り。

インドネシアのプラボウォ・スビアント大統領が中国を訪問し、人民大会堂で行われた歓迎式典には、習近平国家主席も参加した(代表撮影/ロイター/アフロ)

 スハルトが1990年代まで権力に留まれば後継は義理の息子のプラボウォだと見られていた。米国は彼と関係を構築し、大統領になればインドネシアは米側に留まると思っていた。

 2月の大統領選でプラボウォは地滑り的に勝利。彼はトランプと似ている。高齢だが強面で発言は権威主義的だが自由で公正な選挙で選ばれている。

 プラボウォは11月8日に大統領として初の外遊をする。最初は中国。中国はインドネシアのインフラに投資し初の大きな武器取引が行われる可能性がある。

 その後訪米する。米国が怒った新興国グループBRICS加盟申請直後という時期にあたる。

 プラボウォの行動は前任者の非同盟政策と異なり対中傾倒だ。インドネシア=中国関係はスハルト政権成立以降長年冷却し、スハルト政権崩壊後に外交関係は活発化したが経済・軍事関係正常化には時間がかかった。

 ジョコウィは輸送インフラ構築を提案し中国は一帯一路で応じた。プラボウォはこの強力な経済関係を一層拡大しようとしている。ジョコウィと同様にプラボウォも中国に頭を下げることを厭わない。

 米国との関係はより複雑だ。スハルト政権弱体化の時期にプラボウォは反政府活動家誘拐を指示した。帰還者の多くは拷問を受けたと言うが彼は否定している。

 クリントン政権は2000年に彼へのビザ発給を拒否したが、19年に彼が国防大臣になり発給が再開された。

 第1期政権でビザ発給を再開したトランプが再び大統領になり両国協力は容易になった。米国はスハルトの民主主義抑圧に国軍が果たした役割を問い、長年武器をインドネシアに売らず、F16はスペアパーツ不足で動かなくなっていた。国軍は代替供給先を探し、ジョコウィ政権の国防大臣として彼は米、仏、伊、韓、トルコ等と契約したが、戦艦等の重要装備の中国からの購入は避けてきた。


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