2025年2月14日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年12月11日

 プラボウォがこのタブーを破るかは不明だ。中国はフリゲート艦と潜水艦売却を希望しているようだ。元外交官のジャラルは南シナ海の資源を巡り争いがある中国からの戦艦購入に疑問を呈している。

 インドネシアの排他的経済水域の主張は中国の九段線と重なっている。ジャラルは、インドネシアは中国の操り人形と見られないようにしなければ大国には与しないという評判が失われる、と心配している。長年対米関係がその指標だったが今や中国が指標だ。

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中国との共同声明で見るべきこと

 タイとマレーシアに続き、インドネシアが、昨年一旦拒否したBRICS加盟を表明した。これらの申請は、2つの意味で注意を要する。

 第一に、孤立主義的なトランプの登場のみならず中長期的な趨勢として米国の対外関与の意思が低下しているとの認識があるのではないか。米国から守ってもらえないとの認識と、対中傾斜をしても米国はもはや怖くないという認識が合いまったものとも言える。

 第二に、東南アジア諸国連合(ASEAN)の盟主インドネシアは本来ASEANを分断し得るタイ、マレーシアのBRICS加盟を問題視する立場にあるはずだが、自身がASEAN分断に繋がりかねない動きをしたことだ。従来から、公式には大国のどちらも選ばないという立場をとっているASEAN諸国は実はそれぞれ違う選択をしてきた。それゆえ今後分裂が益々顕在化する蓋然性は高かった。

 正にその号砲が鳴った如くだ。このような状況下で多数派形成を必要とし、引き続きASEAN一体性支持を掲げる日本が今後どう立ち回るかは良く考える必要がある。

 次に、プラボウォ訪中の際のインドネシア=中国共同声明につき付言したい。

 共同声明は英文4400語強と包括的で、包括的戦略パートナーシップの従来の4本柱(政治、経済、人的交流、海洋協力)に5本目として安全保障を追加し、来年の2+2会合開催を表明している。

 共同宣言で最も問題なのは、海洋協力の項の「両国は『双方の主張が重複する場所』(in areas of overlapping claims)で共同開発をするとの重要な共通理解に達した」との下りだ。共同開発自体は緊張緩和のために取られる手法で死活的問題ではないが、「双方の主張の重複」を認めている。換言すれば、中国の九段線の主張を受け入れているのは大問題だ。


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