イギリス野党「リフォームUK」を率いるナイジェル・ファラージ氏は17日、米富豪イーロン・マスク氏が自党への献金を検討しており「交渉している」ところだと、BBCに話した。
ドナルド・トランプ次期米大統領が米フロリダ州に持つ私邸兼リゾート「マール・ア・ラーゴ」を訪れたファラージ氏は16日に、現地でマスク氏と会談し、「金銭について話をした」とBBCに明らかにした。
世界一の富豪で、電気自動車会社「テスラ」や宇宙開発会社「スペースX」、ソーシャルメディア「X」を所有するマスク氏と、自党への献金について協議をしているのだとファラージ氏が発言するのは初めて。
トランプ氏再選のため精力的に動き、巨額の資金を提供したマスク氏が、「リフォームUK」を全面的に支援しているのだとも、ファラージ氏は述べた。
「(マスク氏は)私たちを助けようとしている。イギリス企業を通じて合法的にそれができる限り、我々への資金提供にも異論はないそうだ」とも、ファラージ氏は述べた。
ファラージ氏は今月初めには、マスク氏は自分たちを政治的に応援しているものの、献金を頼んだことはないし、「献金の申し出も全くない」と述べていた。
マスク氏自身は「リフォームUK」への献金について言及していない。同党は今年7月のイギリス総選挙で約400万票を獲得し、英下院で5議席を得た。
マスク氏はアメリカ国民で、イギリスでの政治献金は認められていない。
ファラージ氏はBBCのクリス・メイソン政治編集長に対して、マスク氏とは献金について「具体的な数字」には触れていないものの、「リフォームUK」が党として交渉に着手しているのだと話した。さらに、1億ドル(約153億円)規模ではないかという推測が飛び交っていることについては、「ばかげたうわさだ」と一蹴した。
マール・ア・ラーゴ会談
ファラージ氏は16日、「リフォームUK」の新しい財務担当ニック・キャンディー氏と共に約1時間にわたり、マスク氏とマール・ア・ラーゴで会談した。
会談では「トランプ陣営が現場でどう動いたか、マスク氏からいろいろ教えてもらった」のだという。
ファラージ氏はトランプ氏の肖像画の前に自分とキャンディー氏がマスク氏と並んで立つ写真を、ソーシャルメディア「X」に投稿していた。
「イギリスにはリフォーム(改革)が必要だ」とファラージ氏が書くと、これにマスク氏が「もちろん」と返信していた。
「リフォームUK」はこの会談に「マール・ア・ラーゴ」を使わせてもらったことを、トランプ氏に感謝し、イギリスとアメリカの「特別な関係」が「今も良好」なしるしだと述べた。
マスク氏はこのところ「X」で、キア・スターマー英首相(労働党)をしきりに批判する筆頭となり、「リフォームUK」を支持する内容の投稿を重ねている。
南アフリカ生まれのマスク氏は、トランプ氏の大統領再選に向けて7500万ドルを献金。そのうち7200万ドルは自ら設立した政治活動委員会(PAC)「アメリカPAC」に出資した。
マスク氏の父エロル・マスク氏は、「リフォームUK」に1億ドル献金するため息子がイギリス市民になる用意さえあるかもしれないと発言していた。
エロル・マスク氏は今月初め、英保守派ニューステレビ局「GBニュース」に「私はイギリス市民権を得る資格があるので、おそらく息子もそうだろう」と述べていた。
イギリス政府はイギリス国内での政治献金について、規則を再検討する方針を示している。首相報道官は17日、「しかるべき時に関連の改変を行う」と記者団に話した。
マスク氏がイギリス政治にどのような影響力を持ち得るかとBBCが質問すると、ファラージ氏は「イギリスで商取引する企業はイギリスで政治献金ができる。それはそうそうすぐには変わらないだろう」と答えた。
労働党政権が政治献金に関する規則を変える可能性があること自体、労働党が「リフォームUK」のことを「いかに気にしているか」のあらわれだと、ファラージ氏は話した。