2024年12月18日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年12月18日

 11月25日付ウォールストリート・ジャーナル紙は、印中国境を訪れた同紙コラムニストでバード大学教授のミードによる「印中国境の山岳地帯から見た米印関係の今後」との論説を掲げ、印中国境問題を見れば、トランプ政権下での米印関係の行方はそれほど悪くなく、インド人の多くはトランプを歓迎している、と論じている。要旨は以下の通り。

インド側からの中国との国境(KuntalSaha/gettyimages)

 我々が訪問を許された、ブータンと中国に挟まれた印領の中心都市タワングは、北東インドの端アルンナチャルプレデシュ州のその端だが、ここからは米印関係の将来性と複雑さが分かる。

 ダライ・ラマは1959年にタワングに亡命し同じ道を62年に中国軍が侵攻し肥沃なアッサム高原まで到達した。当時のネルー首相はショックを受け、米国に軍事支援を要請。数週間の占領の後中国軍はチベットに帰ったが、この攻撃は今でも北東部州と首都の省庁の思考に影響している。

 タワングから印中間の係争地帯ブムラまではジープで2時間の距離で、その途上我々は62年以前の構築物と少し近代的な施設の両方を見た。これはインド陸軍が今後の中国の敵対行動に対応する用意があることを意味する。

 ブムラ到着後1万5200フィートの国境周辺施設に案内され、遠方にインド側の倍の規模と言われる中国軍が駐留する様子を見た。現在、国境は閉鎖されている。

 中国は国境の向こう側の新施設に莫大な投資をしている。インドも最大限努力しているが、インド側の地形は困難でブムラの狭曲道路の維持は一苦労だ。

 州の人口は140万人だが数十の部族に分かれ一部はモンパより小さい。マニプールやナガランド等の他の北東部の州も同様に複雑だ。

 ミャンマー内戦で難民と武器と薬物が流通する中、民族や宗教を巡る緊張が激化し中国の脅威が無くともインドは手一杯で、この脅威がインドを米国に近づけた。

 この国では宗教を含む全てが複雑だ。30年前にはこの州の人口の10%はキリスト教徒だと言われた。現在はキリスト教徒が一番多く公式には30%だが実際はそれ以上だろう。中央アジアのイスラム改宗者と英国のキリスト教徒に続けて征服されたインドは改宗を止めたいが、米国の信教の自由と衝突する。

 そしてバングラデシュだ。インド北東部は同国空域へのアクセス無しには防衛不能だ。ハシナ前首相はインドと緊密に協働してきた。

 反対運動が権威主義的ハシナの退陣に至った際に米国人は喝采した。多くのインド人は結局ハシナと同程度に権威主義的だが親インドの度合いが低い政府が生まれると見ており米国の関与を批判している。


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