2024年12月18日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年12月18日

 さらに、第1期政権の際の記憶から言うと、パキスタンという共通の敵も居る。インドにとっては地域のライバルだが、トランプにとっても、忌み嫌うべきイスラム・テロの巣窟との位置づけだった(その後のテロとの戦いの推移にかんがみれば、この点の重要性は、第二期政権では下がるかもしれないが)。このように、マクロ的にみると、米印関係を下支えする多くの要素があると言えるだろう。

貿易問題も死角なし

 問題になり得るのは、ミクロの部分だ。ミクロと言ってよいかどうかは分からないが、この論説が指摘する「人権」への対応である。ただし、人権がトランプ外交の主要項目になるとは思われない。

 トランプが目の敵にしている米国の貿易赤字については、1980年代と様変わりで、23年時点で、対中赤字が全体の4分の1(26.3%)、対欧州連合(EU)全体で2割弱(19.0%)、対メキシコと対カナダを足して(22.3%)これらの合計で67%弱を占めるが、日本はカナダより低い6.7%。インドは4.1%に過ぎないので、貿易問題が印米関係の足かせになるということは余程のことがなければないだろう。そして、ロシアからの武器輸入も、既に減少気味であるし、米国からの武器輸入が増えれば、問題にはなるまい。

 一方、イランと米国との関係緊張はインドにとって問題になり得る。インド版一帯一路ではイランのチャバハール港の役割が大きいが、この開発は難しくなるだろう。

 こうして見ると、印米関係に打撃を与える死角はあまり見当たらない。これは、日本にとっても良いことであろう。

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