2024年12月18日(水)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2024年12月18日

 年の瀬の隣国は激動である。国家元首の大統領は職務停止、情勢は予断を許さない。

 ボンヤリ報道をみていて、端なくも思い出したのは、いまから8年前。2016年の秋からしばらくソウルで暮らした時のことである。

尹錫悦大統領の退陣を求めるデモ。歴史は繰り返される(AP/アフロ)

 渡航して落ち着いたのが、ちょうど時の大統領・朴槿恵の退陣をよびかける大々的なデモが湧き起こったころ。いわゆる「ろうそく革命」である。弥次馬よろしく、たくさんの人をかきわけつつ、デモに参加した。

 ろうそくを手渡され、ハングルで「パククネ・タイジン」と書いたビラをもらって、唱和した記憶がある。自身は部外者、危ないから火はつけなかったけれど、今年このたびも同じく、ろうそくに火をともし、「ユンソギョル・タイジン」のビラで連呼絶叫したデモが盛り上がった。既視感(デジャ・ヴ)は当然であろう。

 当時のやはり12月、朴槿恵に対する弾劾訴追案が可決、大統領の職務停止となる。まもなく国家元首は、罷免・逮捕・収監にいたった。

 どうやら現大統領の尹錫悦も、朴槿恵と同じ運命をたどるらしい。このたびは国会が国政を妨害しているとして「非常戒厳」を発令、国会を停止しようとした。戒厳令など無縁の日本では、誰が見ても暴挙である。

 かの国でもさすがに「内乱」にあたるとして、やはり捜査・弾劾を受けた。弾劾訴追案は去る12月14日に可決している。

 尹錫悦大統領の「非常戒厳」発令が「憲法違反」かどうか、裁判所の判断を待つことになる。大統領本人はもと法曹、そのためか徹底抗戦のかまえと報じられた。韓国の政治・法律に明るくない筆者には、その帰趨はおよそ予想もつかない。

 いずれにしても、あまりに軽挙妄動だとは、素人目でさえ感じた。ともあれ成果ゼロの武力発動、混乱だけ残したのでは、国政のリーダーの資格がないことだけは間違いないだろう。

 他国の裁判・政局に門外漢が容喙(ようかい)できることは何もない。しかし重要な隣国に対するわが国のまなざし・姿勢には、いささか釈然としないことはある。


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