2024年4月20日(土)

田部康喜のTV読本

2016年3月27日

 東日本大震災から5年目の彼岸も過ぎる。人類が未経験だったメルトダウンの連鎖という惨事のなかで、現場はどのように判断して動いたのか。

福島第一原子力発電所敷地内に立ち並ぶ貯水タンク(Getty Images)

 NHKスペシャル「メルトダウン 危機の88時間」(3月13日)は、福島第1原子力発電所の事故について、その責任を追及することを急がず、現場の事実を積み上げてみせた。亡き吉田昌郎所長が国会事故調査委員会の聞き取りに答えた、未公開の証言に加えて、関係者約500人の証言が裏付けになっている。当時の現場の状況を再現するドラマが、事実をより理解しやすくさせている。

88時間目に起きたこととは

 大震災と巨大津波から88時間目とは、第1号機と第3号機がメルトダウンを起こし、緊急冷却装置が稼働してかろうじてメルトダウンを免れていた第2号機が原子炉格納容器の爆発の危機に陥った瞬間だった。

 格納容器が爆発すれば、大量の放射能汚染物質が周囲に拡散するばかりか、第1原子力発電所に立ち入りができなくなり、原発事故の収拾は困難になる。さらに、放射能汚染物質は隣の福島第2原子力発電所にも流れ込み、この発電所の地震と津波による被害対策もできなくなる。

 さらには、東電関係者の証言として、「東日本に人が住めなくなる」と思った瞬間であった。「日本がダメになる。そのことを死ぬまで忘れない」と別の証言者は語る。


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