2025年5月16日(金)

Wedge OPINION

2025年4月18日

 アメリカ外交界きっての知日派、リチャード・アーミテージ元国務副長官が4月13日、亡くなった。日米関係を、お題目ではなく実効性のある同盟に引き上げようと奔走、集団的自衛権の行使容認など日本の安全保障政策の転換を結果的に後押しした。

リチャード・アーミテージ(AP/アフロ)

 時あたかも、トランプ大統領が日本への不満、非を鳴らし続けている。無知な指導者が愚かな言動を繰り返す中にあって、重鎮をも失った日米同盟が漂流してしまうのではないかとの危惧は少なくない。

9条改正への強い期待感を表明

 アーミテージ氏死去を惜しむ声は日本国でも相次いだ。石破茂首相は「深い知見を持って日米同盟の強化に尽力された功績に敬意を表し、御霊の安らかならんことをお祈り申し上げる」と、型通りながらも丁重な弔意を表明した。

 筆者は2004年8月、ブッシュ政権(子)1期目の国務副長官だったアーミテージ氏に単独でインタビューした。副長官は、日本を防衛するというコミットメントは絶対的なものだと強調しながら、「日本の憲法9条は(日米)協力にとっての束縛だ。米国の艦船が攻撃されても、日本は助けてはくれない。一方通行だ」と片務性の不備を指摘した。

 9条改正はあくまで日本自身の問題との見解を示したうえで、「日本が手続きを踏んで決断することを期待している」「米国は、日本の国連安全保障理事会入りを支持しているが、(常任理事国が)自らの兵力を展開できなければ、皮肉なことになる」とも述べ、改正の必要性を強調した(2004年8月6日 産経新聞)。

 インタビューの直前、アーミテージ氏は訪米した中川秀直自民党国会対策委員長(当時)に、「(憲法9条は)日米同盟への障害」との認識を表明し、日本国内で物議を醸していた時期だった。氏はインタビューで、「障害」との表現を否定、「束縛」という言葉を繰り返した。

 筆者が籍を置いていた新聞社は、憲法改正を積極的に支持していたことから、副長官は日本側に自身の発言の真意を説明するには、いい機会と場であると判断したようだ。


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