11月30日からパリにおいて、気候変動枠組み条約(UNFCCC)第21回締約国会議(COP21)が開催される。190カ国以上が集まり、地球温暖化、気候変動問題に対処するため、2020年以降の二酸化炭素などの温室効果ガスの排出抑制策についての合意を目指し議論が行われる。
1997年に京都にて開催されたCOP3において、先進国が2008年から12年までの5年間の温室効果ガスの排出量を抑制することが合意された。合意は京都議定書にまとめられ、日本、欧州連合、ロシアなどの批准により条件を満たし2005年に発効したが、米国は批准せず、また経済発展により二酸化炭素を中心に急速に温室効果ガスの排出量を増やした中国などの新興国も排出量の義務を持たなかった。結果、京都議定書は世界の排出量の25%しか対象とせず、その実効性に疑問が投げかけられた。京都議定書は延長されず、2013年以降の排出量に関する取り決めはなくなった。
世界の排出量を抑制するための新たな取り決めを合意する会議がCOP21だが、新取り決めには排出量第1位の中国、第2位の米国の参加が必須であることから、両国が参加可能な形として、各国が表明した将来の排出量を、義務ではなく目標値とする形での合意が行われると予想されている。UNFCCCの事務局には、既に各国が目標値を提出済みだ。日本も、2030年に13年比26%削減する案を事務局に提出した。
各国が温室効果ガスの排出量抑制策を検討する中で、世界の1次エネルギー消費の30%近くを占め、発電部門を中心に依然として大量に消費されている石炭に対する風当たりが一段と強くなっている。石炭火力の新設が予定されている日本の発電部門と、設備の輸出が見込まれる機電、インフラ部門に、大きな影響がある話だ。
依然としてエネルギーの主役石炭
第2次世界大戦後、傾斜生産政策を導入した日本においては復興に必須の鉄鋼と石炭生産に資源が集中的に投入された。石炭生産は1961年に5540万トンに達したが、採炭条件の悪化から、その後減少を続け、現在は年産100万トンになっている。戦後最盛期には45万人を数えた炭鉱夫は、いまほとんどいなくなった。そのため、日本では典型的な斜陽と見られる石炭産業だが、世界では成長産業だ。
第2次世界大戦後、中東各国において石油が大量に生産されるようになり、日本を初め多くの国で石炭から石油への転換が行われた。消費が減少し斜陽化していた石炭産業を復活させたのは1973年秋の第1次石油ショックだった。中東の産油国を中心にした石油輸出国機構(OPEC)が力を付け、石油の価格は一挙に4倍になり、石炭は相対的な価格競争力を回復した。米国、カナダ、豪州、南アフリカ、中国、ロシアなど産炭地が政治的に安定した国に分散している地政学も石炭に有利に働いた。その後40年間に亘り石炭の相対的な価格競争力は維持されている。