2024年11月24日(日)

World Energy Watch

2015年11月27日

 世界の石炭生産量は、73年の30億7400万トンから2013年の78億2300万トンに増加し、世界の1次エネルギー生産に占めるシェアは24.6%から29.0%に増加した。図-1の通りだ。特に、世界の発電における石炭のシェアは高く、図-2が示すように、電気の4割以上は石炭から作られている。地政学的利点があり、コスト競争力もある石炭の消費が増えたのは必然だったが、大きな問題が出てきた。80年代から国連の場でも議論が始まった地球温暖化、気候変動だ。

悪者にされる石炭火力

 石炭は燃焼時に石油、天然ガスよりも多くの二酸化炭素を排出するために、1kWhの発電を行う際に排出される二酸化炭素も多くなる。日本での排出量は表の通りであり、LNG(液化天然ガス)を利用する火力の約1.6倍の二酸化炭素が石炭火力から排出される。比較的新しい設備が多く石炭火力の効率が世界でも最も良いとされる日本での排出量より、他国の石炭火力からの排出量はさらに多くなる。

 温室効果ガスの排出量を抑制するため、多くの国でベース電源として利用されている石炭火力の稼働を抑える必要があると考えられるが、価格競争力がある石炭火力から他の発電源への切り替えは、電気料金の上昇を招くことになり、簡単にできることではない。

 そんななかで、脱石炭火力を打ち出したのは米国のオバマ大統領だった。2008年の大統領選挙の時点からオバマは、地球温暖化、気候変動対策が最重要課題とし、二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギー導入、環境ビジネス支援を打ち出した。しかし、ほとんど成果はなかった。

 2期目のオバマは方針を変え、石炭火力削減を強く打ち出す。背景には、シェール革命により天然ガス価格が下落し、石炭より天然ガスが価格競争力を持つ地域が増えたことがある(ポーター教授も認めたシェール革命が実現する米国の気候変動政策http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5246?page=1)。全米の31%を占める電力部門の二酸化炭素排出量を減少させるために、石炭から天然ガスに切り替えても、電気料金の上昇を抑制できる環境になったのだ。シェール革命により全米の発電量に占める石炭火力の比率は、既に50%から40%を切るまで低下しているが、さらに減少することになる。


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