オバマの石炭への宣戦布告が大統領選の争点に
オバマの指示を受けた環境保護庁(EPA)は、2012年に新設石炭火力からの二酸化炭素排出量に関する規制を行うと発表し、13年6月には、既存石炭火力からの排出量も規制する方針を発表する。新設石炭火力は二酸化炭素を捕集し貯留するCCSと呼ばれる装置を付設しない限り、規制値をクリアすることは不可能になった。また、既存石炭火力からの排出量については、州の事情を反映した異なる規制値を各州に連邦政府が課し、具体策は州政府が立案することになった。最終案は環境保護庁により8月に発表された。
最近の米国の世論調査では、温暖化、気候変動を重要な問題と考える人が増えてきているが、民主党との比較では共和党支持者には、温暖化は人為的な原因ではないとする懐疑論の立場に立つ人が多い。また、石炭産業の経営者は一般的に共和党支持であり、多くの産炭州は共和党の地盤だ。共和党は当然、オバマの気候変動政策には反対の立場に立つ。
11月17日には、環境保護庁の石炭火力からの排出抑制策を停止するための議会審査法が、共和党が多数を占める上院で可決された。気候変動政策を最も重要なレガシー(遺産)とするオバマが拒否権を行使することが確実視されており、実効性はないとみられているが、石炭火力からの排出抑制政策が大統領選の争点の一つになりそうだ。
英国は石炭火力廃止を決定
20世紀前半には、英国は年間3億トン近い石炭の生産を行っていたが、採炭条件の悪化により生産数量は減少を続け、2014年の生産数量は1200万トンになった。一方、国内の石炭火力発電所では、国内炭に代わり輸入炭が使用されるようになり、2014年には4200万トンが輸入された。
COP21直前の11月18日に、英国政府は、気候変動対策のため2023年から石炭火力の利用に制限を課し、2025年までに全廃すると発表した。2014年の発電量では石炭火力は29.1%を占めており廃止までの道筋は簡単ではないと思われるが、詳細計画は来年春に発表される予定だ。
英国は、1990年に電力を自由化した。将来の電力価格が予見できなくなったことから、発電設備への投資が減少し、設備が不足する事態になっている。今月になり、送電会社が節電を呼びかける事態になっているほどだ。自由化市場で設備を導入するために、英国政府は原子力発電所と再エネ設備には電力の買い取り価格保証制度を導入し、さらに火力発電設備を中心に設備を保有していれば一定額が支払われる容量市場を導入したが、廃止予定の石炭火力を全て代替する新設備が導入されるか疑問との声も出ている。
電力供給に問題が生じる懸念を持ちながら、石炭火力の廃止に踏み切るのは気候変動問題を最重要課題の一つとする英国政府の姿勢の現れだろう。