国内外の高校生が福島県いわき市に集まり、未来のまちづくりについて話し合う「ハイスクール世界サミットin福島」が8月6日から8日の3日間に渡って開催された。実行委員会である「未来のまちづくり・みちづくりフォーラム実行委員会」を組織したのは、福島県広野町のNPO法人ハッピーロードネットを中心に、国や県、いわき市、青年会議所などである。
テーマは「福島から世界へ発信する私たちの夢」
最終日の8日には、福島第一原発から最も近い大学である東日本国際大学で「環境エネルギー」と「福島の再生」という2つの議題について前日に討議した結果を高校生たちが発表した。
実行委員会は昨年まで国内の高校生を集めてのワークショップを行っていたが、今年は全国25校54人に加えて、アメリカやドイツ、エジプト等12カ国から20人の参加者も集めた。サミットの企画、運営については以前までに高校生として参加したことのある大学生が中心となった。初日の6日には参加者が常磐自動車道ならはパーキングエリアやJR富岡駅跡地などを視察、2日目には原発と自然エネルギーの比較や福島の再生・まちづくりをテーマに議論した。
最終日のフォーラムでは、アドバイザーとして安倍昭恵首相夫人や地元選挙区である森まさこ参議院議員、森昌文国土交通省道路局長、畠利行福島県副知事が登壇した。地元いわき市の清水敏男市長は「来年から18歳以上に選挙権が付与される。1人の有権者として自分たちの国、地域がどうなるかを考えていってほしい」と来賓挨拶の中で述べた。
「福島の復興(まちづくり)」の発表では、報道と実際の福島の姿にギャップがあるという声が県外の高校生からあがった。震災から4年が経ち、復興が進んでいるというイメージを持っていたが「意外と進んでいない」。震災当時と変わらないJR富岡駅の状態を見て「驚きとむなしさを感じた」という。
一方、地元福島の高校生は、県外の高校生から「福島には近寄りたくない」と思われていると感じていたが、討議をしている中で、逆に「(福島の)力になりたい」と考えてくれていると知り、驚いたという。ネガティブな情報ばかりが報道されているが、自分たちもSNSなどを使ってポジティブな福島の姿を発信したいといった前向きな発言もあった。
「今の福島には住みたくない」との言葉に
「復興とは少なくとも震災以前の福島に戻すこと」としたグループでは、震災前の福島の課題と震災後の福島の課題を分けて考え、地域の魅力を高めることが必要と提言。農業・漁業体験や地域の伝統行事をブランド化するなど地域活性化のための具体策が出た。
震災前の福島の課題としては、都市開発が進んでいないことや高齢化を挙げ、震災後の課題としては放射能による健康被害や故郷を離れなければならない精神的な問題を挙げた。興味深かったのは、発表の中で「『自分の故郷でなければ』、今の福島に住むことは難しい」との踏み込んだ意見が複数のグループが話し合った結果として発表されたことだ。他のグループでも、「浜通りに住みたいか?」との質問に対して、放射能の影響や生活の再建ができるのかが分からないといった不安から「住みたいとは思えない」との答えが出た。