2026年1月19日(月)

トランプ・パワー

2026年1月19日

 また、首脳外交を重視するトランプ氏との個人的関係を構築することも重要である。安倍晋三元首相が行ったように、トランプ氏に対してはフットワークの軽い外交が不可欠である。官僚が事前に準備をするようなものではなく、現在欧州や中東の首脳が行っているように、必要な時にはいつでも電話や対面でトランプ氏に日本の立場をインプットし、その決断に影響を与えなければならない。そのためには、首相が国会に縛られている状況を改善することが必要だが、何より首相自身に戦略とビジョンが求められる。

トランプ2.0後の世界
日本が描くべき戦略

 さらに重要なのは、トランプ2.0への対応にとどまらず、その先を見据えた戦略的な種まきを行うことである。28年に目を向ければ、今回のNSSにも強い影響を与えた抑制主義者のヴァンス大統領誕生といったシナリオも否定できない。ヴァンス氏はディール外交をする人物ではないが、その抑制主義の傾向がどこまで本物なのかは不透明である。

 日本はヴァンス氏をはじめ現政権の有力者への接触を続けると同時に、政権の交代に左右されない形で、連邦議会、州政府、産業界、シンクタンクなどとの関係を重層的に構築していく必要がある。

 同時に、中国との関係を単に戦略的互恵関係という過去の表現の焼き直しではない、現実に即したものへと変える必要がある。政治指導者が反中感情を煽り、支持者がそれを歓迎するような空気は、現在の米中関係をふまえれば日本の国益にはならない。理念ではなく、力関係や経済関係の現状をふまえた安定を重視する対中戦略の構築が必要である。

 また、インドや東南アジア諸国連合(ASEAN)など中国以外の勢力も地域バランスに変化をもたらす中、日本は日米同盟を基軸としつつも、多国間安全保障協力や地域秩序の形成を通じて、中長期的に平和と安定に貢献していくべきである。そのためには、日米豪比の防衛協力枠組みの拡大や、日米豪印の枠組みを活用した経済安全保障や技術協力といった非軍事分野での存在感を高めることも不可欠である。

 物価高に苦しむ国民は、現状を変えてくれる指導者を求めている。だが、政治は民意に迎合するのではなく、米中関係の現状をふまえて、日本の生存を維持するために、なぜ防衛費の増額が必要なのか、なぜ中国との関係の安定が必要なのかを具体的に説明し、国民的理解を得る努力が求められる。

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Wedge 2025年2月号より
災害大国を生きる 積み残された日本の宿題
災害大国を生きる 積み残された日本の宿題

「こういう運命だったと思うしかない」輪島市町野町に住んでいた小池宏さん(70歳)は小誌の取材にこう答えた。1月の地震で自宅は全壊。9月の豪雨災害時は自宅周辺一帯が湖のようになったという。能登半島地震から1年。現地では今もなお、土砂崩れによって山肌が見えたままの箇所があったほか、瓦礫で塞がれた道路や倒壊した家屋も多数残っていた。日本は今年で発災から30年を迎える阪神・淡路大震災や東日本大震災など、これまで幾多の自然災害を経験し、様々な教訓を得てきた。にもかかわらず、被災地では「繰り返される光景」がある。能登の現在地を記録するとともに、本格的な人口減少時代を迎える中、災害大国・日本の震災復興に必要な視点、改善すべき方向性を提示したい。


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