米国のトランプ大統領による公共財産・施設の”私物化”が進んでいる。国内良識派の間からは「United States of Trumpの国造りだ」として批判が強まる一方だ。
由緒ある文化施設に自らの名
首都ワシントン、ニューヨーク、シカゴ、アトランタ、サンフランシスコなど全米主要都市を中心に一斉に「NO KINGS」(王様はいらない)デモが繰り広げられたのは、昨年10月のことだった。トランプ大統領の一連の専制的内外政策に抗議したもので、都市、町村部合わせ2700カ所で行われたデモ・集会参加者は史上最大規模の700万人近くにも達した。
その一方で、大統領は臆面もなく、政治・経済のみならず、音楽、芸術家の自由な活動にも介入し、美術館の展示内容に制限を加えるなど、恣意的言動があいついだ。
最近でとくに物議をかもしたのが、ワシントンD.C.のポトマック河畔にある由緒ある国立総合文化施設「ジョン・F・ケネディ・センター」(正式英語名はJohn F. Kennedy Center for the Performing Arts)をめぐる大統領個人の強引な“乗っ取り”事件だ。
同施設は古くから、オペラ、ミュージカル、バレーなどの公演のほか、ワシントン・ナショナル交響楽団の定期演奏会の場としても知られ、地元のみならず、首都を訪れる多くのファンに親しまれてきた。
筆者も、ワシントン特派員時代、隣接するアパート「ウォーターゲート・コンプレックス」に住んでいたこともあり、目ぼしい演目のたびに足しげく通ったが、料金以上の質の高さに常に心満たされるものがあった。
“乗っ取り”騒ぎは、昨年1月20日、トランプ氏がホワイトハウスに返り咲いた直後に始まった。大統領はまず、理事会改変に乗り出し、すでに連邦議会の承認を得て就任していた23人の理事のほかに、新たに自分の側近、友人たち34人を理事に任命して合計57人の大所帯とし、理事会審議での多数支配体制を敷いた。
その上で、同年2月、開催された理事会でこれまでの理事長を解任し、自らが後任として就任した。
米マスコミは、貴重な文化施設に対する強引なやり方を一斉に批判した。
しかし、大統領はひるむことなく、その後、機会あるごとに自分のウェブサイトなどを通じ、センターの名称変更の意向についても“観測気球”を打ち上げ始めた。
