ビザ発給やホワイトハウスも「自らのもの」に
さらに同月、大統領は、国立の学術研究施設である「平和研究所(Institute of Peace)」について、「Donald J. Trump Institute of Peace」に改変させたほか、米海軍に対しては、自らの名を付した次世代「トランプ級戦艦」の建造を指示した。
このほか、大統領は昨年9月、米国内での居住と就労を希望する富裕外国人に対し、一人当たり100万ドルの代価で優先的審査と認可を約束した「Trump Gold Card」ビザ発給計画を発表。カード表面は、自由の女神を背景にトランプ氏の肖像が大きく刷り込まれ「第45代および47代米国大統領」の文字と自らの署名が入ったデザインとなっている。
続いて、全米の国立公園を管理する内務省は昨年10月、すべての公園、施設に自由に出入りできる「年間特別パス」について、26年度分からトランプ大統領の顔写真を刷り込んだデザインに変更すると発表。自然保護団体は「毎年、国立公園の美しい景観を撮ったフォト・コンテストの中から選ばれた最優秀ショットがデザイン化されてきた慣例を破る前代未聞の政治介入だ」として、告訴している。
トランプ氏は、歴代大統領の執務と家族居住のための機能を兼ね備えた伝統あるホワイトハウスについても、私有財産とばかり庭園から内部の壁面、インテリアにいたるまで自らの趣味に合わせ金メッキを主体とした華美な改装に乗り出し、ファースト・レディーのオフィスや一般の観光客が出入りできるレセプションルームなどのある「イースト・ウイング」(東棟)に至っては、全体をすでに解体させ、現在、巨費を投じたきらびやかな舞踏会場が建設工事中だ。
こうしたことから、米マスコミの間では、トランプ大統領は英国の国王にあやかり、自らを“米国王”にまつりあげようとしているだけでなく、「国家自体を国民の統合体である『United States of America』から『United States of Trump』へと作り替えようとしている」との指摘まで出始めている。
パーソナル・ブランドをホワイトハウスに持ち込む
もともと『United States of Trump』の異名は、19年、ジョージア州ケネソー大学社会学部のジョエル・クロンベス助教授ら二人のトランプ研究者が発表した“The United States of Trump Corp”と題する論文のタイトルとして最初に登場したもので、その中で、過去どの歴代大統領にも見られなかった特異なトランプ大統領の統治スタイルについて、以下のように指摘している:
「トランプが尋常ならざる存在である真の理由は、大統領として米国政治史上初めて、従来からのパーソナル・ブランドをそのままホワイトハウスに持ち込んだ点にある。過去の大統領の場合、ジョンソン大統領の「偉大なる社会(Great Society)』」、レーガン大統領の「強いアメリカ(Strong America)」、オバマ大統領の「オバマ・ケア(Obama Care)」などのように、それなりにユニークな政治的ブランドが推し進められ、世間に広まった。しかし、それはあくまで、一定の支持率を維持し、政権運営安定化のための手段に過ぎなかった。
これに対し、彼は実業家時代から宣伝してきた自分のブランドをSNSなどあらゆる手段を駆使して国内外に拡大させ、市場主義に依拠した個人ブランドを大統領になってからも国家統治スタイルとして体現させてきたのである。トランプにとっての大統領職は国家や国民の利益増進のためではなく、彼個人のブランドに支えられた“象徴的資本(symbolic capital)”を最大限注入するためであるということだ。
