そしてついに、同年12月18日、緊急招集された理事会で、これまで全米の多くのファンに愛されてきた名称の変更が賛成多数で可決された。センター名の冒頭に堂々と自分の名前を冠し、新たな名称は「ドナルド・J・トランプ・アンド・ジョン・F・ケネディ舞台芸術センター」(英語名:The Donald J. Trump and John F. Kennedy Center for the Performing Arts)と二人の大統領の名が並ぶ長々しいものとなった。間髪入れず、翌日には建物の外壁工事を命じ、正面玄関近くの大きなネーム・プレートも付け替えられた。
「ジョン・F・ケネディ・センター」の呼称は言うまでもなく、第35代大統領自身が在任中につけたものではなく、暗殺後、国民的英雄視され、議会承認の下に8年後の1971年に、多くの国民の支持を得て記念文化施設として建設されたものだった。
これまで、国の公共施設に過去の大統領の名が記されることは珍しくなく、近年の他の例では、首都近郊の「ナショナル空港」が、ロナルド・レーガン第40代大統領退任後の1998年に「ロナルド・レーガン空港」に改名され今日に至っている。
このほか、ジョンソン、ニクソン、フォード、カーター、ブッシュら歴代大統領の名称が付けられた図書館、公園などの施設も多く存在する。いずれの場合も、支持派の有権者、議員たちのイニシアチブで命名された。しかし、大統領が在任中に自らの意思で、由緒ある施設を改称し、しかも自分の名前を付けた例は、かつてない異例事態だ。
アーティストたちは反発
こうしたことから、文化施設までも私物化しようとする大統領の横暴に対する反発の動きが広がり始めた。中でも、トップアーティストたちの毅然たる示威行動が話題を広げている。
まず、エミー賞受賞の女優でソウル歌手としても知られるイッサ・レイは、トランプ氏が同センター理事長に就任した直後、「音楽は人種、世代、イデオロギーを超え、すべての人々を結びつけるものであり、対立をあおるものではない」として抗議し、すでに予定されていた公演をキャンセルした。その後も、出演を検討中だったアーティストグループも計画を変更した。
さらに、トランプ氏の名前を冠する名称変更が公表された昨年12月には、ジャズプレーヤーのチャック・レッドが「クリスマス・イブ・コンサート」をキャンセルしたのに続き、ニューヨークに拠点を置くダンスカンパニー「Doug Varone and Dancers」がSNSで「2026年4月開催予定の2回の公演中止」をセンター側に通告した。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、2回分の公演料収入は4万ドルが見込まれていた。それでもダンスグループの責任者は「政治介入により芸術の自由が損なわれることは、金銭的損出以上に重大だ」とコメントしている。
また、年明けの去る9日、伝統ある『ワシントン・ナショナル・オペラ』が創設以来、永年活動拠点としてきた『ケネディ・センター』からの転出を決定したと発表した。その理由として、トランプ大統領が同センター理事長就任以来、不満を抱いた多くのスポンサーからの寄付やチケット販売が激減したためとしている。
この名称変更については、法律専門家の間でも、「もともとセンターは、暗殺された故ケネディ大統領のメモリアルとして米議会で成立した法律に基づき設立されたものであり、議会の承認なしに元の名前を変更することは許されない」として、批判が渦巻いている。
