2026年1月30日(金)

世界の記述

2026年1月30日

 しかしトランプ氏は21日に、北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長と会談。終了後、欧州8カ国に対する関税措置は行わないことを声明した。

 22⽇には、ルッテ氏とデンマークのフレデリクセン⾸相が会談し、デンマークの主権維持を前提にした上で、NATO北極圏安全保障強化の枠組みの中での米軍基地を認める方向を模索した。その措置としては、英国が東地中海のキプロスに構える軍事拠点を英国領とみなす「主権基地領域(sovereign base area)」協定をモデルに検討していると伝えられた。

 これは多国間協力枠組みの中で米国の協力を確保しつつ、その範囲を限定するという意味だが、それをどう考えたらよいのか。NATOという同盟国の枠組みの中に米国の力を落とし込んでいく、米国の過剰な形での突出を抑制していくという意味にとらえてよいのか。だとすれば米欧関係の中での欧州の歴史的妥協の手法だ。

 NATOという枠組みは米国主導で成立し、米国の道具だと思われがちだが、米国は多国間枠組みの中の一加盟国にすぎない。むしろ多くの局面で米国の主張が通らなかったのがNATOの歴史だ。

 戦後NATO成立時に、英仏が策したのは米国が欧州から撤退することを阻止しつつ、多国間枠組みの協力にとどめておくことにあった。NATO創設の式典がワシントンDCで行われたことは当時の英仏、とくにべヴィン英外相の提案だった。

 米国は冷戦時代、自らの欧州へのコミットを「招かれた帝国(=米国)」としての所作だったという複雑な心境を語った。トランプの孤立主義の背景には、こうした伝統的な保守主義の心情が通奏低音のように流れている。

米国の欧州からの後退

 昨年12月に発表された米国国家安全保障戦略(NSS2025は、米国の中南米政策最重視の方向が日本でも強調された。欧州はこれをどう見ているであろうか。

 欧州議会研究部(EPRS)は、トランプ政権は西半球への「米国の軸足移動(pivot)」を構想し、1823年のモンロー主義のひそみに倣う「トランプ原則(Corollary)」を導入し、「米国の裏庭」という特権的勢力圏の復活を図っていると指摘する。

 他方で、米国外交にとって欧州の存在は2番目から3番目に降格した。こうした一連の米国外交の肝にあるのは、世界秩序の責任者としての「優越」意識だとEPRSは考えている。

 NSS2025では、欧州は経済的に衰退し、「大陸を変貌させ、国民的アイデンティティの喪失を招く移民政策」、さらには「文明消滅の可能性」に直面しているとして批判されている。米国への安全保障戦略の中で欧州の地位の後退はあきらかだ。


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