米国「優越意識」の歴史
トランプ外交にみられる「米国第一主義」「偉大な米国の再生(MAGA)」の背景は米国の歴史、特に米欧関係の歴史そのものにある。
米国にとってヨーロッパとは、悪しき旧弊と貴族的な堕落の大陸であった。ニューイングランドに「新しい聖地エルサレム」を見たピューリタンたちは、そこに全世界の模範となるようなキリスト教社会を築こうとした。
それは新たな理想社会として人々が仰ぎ見る「丘の上の町」という表現を借りて示された。米国は常に若々しく未来の価値を目指した希望の国でなければならなかった。
他方で、もともとヨーロッパの人々にとって、米国は植民地時代のイメージが根強かった。19世紀前半にはアメリカ論がブームとなった時期があるが、そこで語られたのは主に米国に対する軽侮であった。未開、粗野、単純などの否定的なイメージだった(ビアード『アメリカ合衆国史』岩波書店)。
こうした精神的な階層構造が大きく変化するのは19世紀末の米西戦争を契機にしてのことだった。ここで、米国が物理的にはヨーロッパを凌駕し、世界の牽引車としての実力を持っていることが自他共に認めざるを得なくなったのである。
この戦争でアメリカ装甲艦隊は大量砲撃によってスペイン艦隊を圧倒し、機械化重武装の威力をまざまざと見せ付けた。キューバは独立し、米国はフィリピンを買収、スペインはプエルトリコやグアムを失った。
この戦争は文字通り「新しい戦争」であり、ヨーロッパの人々に米国に対する認識を変えさせた。「牧歌的な農民と小商店主の国」のイメージは今や工業化された戦闘的な国への脅威となったのである。同時に、ヨーロッパ人にとって強大なアメリカ資本主義への脅威の誕生でもあった。
米国の参戦によって連合国が勝利した第一次世界大戦は20世紀アメリカ時代の到来を確固たるものにした。しかしまだ米国は世界へのコミットに本気ではなかった。
その意識が大きく転換するのは、第二次世界大戦であった。戦後米国は世界の警察官として西側世界の盟主となった。冷戦の終結は、共産主義に対して断固たる決意で勝利したと米国人には理解された。
世界を理想に導いていくのは、米国に課せられた「明白な天命」なのだ。それは米国の偉大さを強調したレーガン、GWブッシュ、そして現在のトランプと彼らを支える支持者たちだけではなく、米国人のほとんどの深層に培われている意識だ。世界のリーダーは常に強く正しい、それはかつての植民地主義時代の欧州帝国主義諸国が共有していたアジア・アフリカ諸国を支配下に置く口実としての啓蒙運動の担い手=「文明の伝搬者」としての植民地肯定論だった。これこそ「帝国意識」「帝国性」だ。
