2026年2月13日(金)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2026年2月13日

 トランプ大統領が次期米連邦準備理事会(FRB)議長に指名したケビン・ウォーシュ元FRB理事については、指名というニュースを受けて金が一時的に暴落したことから「ウォーシュ・ショック」という有り難くない事件名で知られることとなった。

FRB次期議長指名されたケビン・ウォーシュ氏を指名(2017年5月、ロイター/アフロ)

 この人事について、そして何よりもウォーシュ氏の立ち位置については、かなり複雑な背景がある。指名直後の「ショック」に関しても、市場の反応の背後にあるセンチメント(感情的な地合い)は複雑である。その一方で、ウォーシュ氏の指名について、日本としてはどう受け止めたら良いのか、とりわけ日米関係の今後という視点から、当面の考察をしてみたい。

金融界の百戦錬磨の猛者

 ウォーシュ氏の経歴だが、スタンフォードを出てからはハーバードで法学博士、ハーバードとマサチューセッツ工科大(MIT)のビジネススクールにも在籍している。ビジネスキャリアのスタートは、モルガン・スタンレー投資銀行で、M&Aつまり企業買収を扱う部門で実務を叩き上げている。時は90年代末から2000年代であり、最初のITバブルが膨張して弾けるという巨大なドラマを実務の現場で痛いほど経験しているはずだ。

 その後はブッシュ政権で金融規制を担当した後に、35歳でFRB理事に就任。その若さは大きな話題となった。

 そして2007年から08年、米国の金融界はベアスターンズ破綻からリーマン破綻へと、再び猛烈な嵐に見舞われる。ウォーシュ氏は、ここでFRBと政府、さらにはウォール街との実務交渉のキーマンを務めたとされる。当時のバーナンキFRB議長、やがてオバマ政権の財務長官としてリーマン破綻の後始末をすることとなるガイトナー氏などとチームを組んでの仕事であった。

 ウォーシュ氏については、今回のFRB議長候補指名にあたって、タカ派であるとか、ドル防衛に向かうだろうなどという評価があるが、そのような単純な紹介では不十分であろう。1970年生まれの55歳という若さでありながら、修羅場を2度も体験しているわけであり、いわば百戦錬磨の猛者である。しかも2度目の修羅場であるリーマン・ショックにおいては、米国の金融システムの全体が破綻しかねないという危機の渦中にあって、その中心で見事に国家と金融システムを守り抜いている。

 ちなみに、ウォーシュ氏の妻は米国の化粧品大手で同族会社のエスティ・ローダーの相続人である。彼女の父親はトランプ氏の同級生ということで、大統領との個人的な関係があるという。

 同族企業の相続人を妻に持つことで、ホテル業を家業とするトランプ氏と似ている面があるという声もあるにはある。けれども、その関係は妻の父を介した儀礼的な域を出ないと思われる。


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