宇宙空間でも光技術が重要な通信手段に
ノキア(フィンランド)光ネットワーク事業担当シニアディレクター
リーブン・レブロー氏
――今回、シドニーで開かれた年次総会の成果は何だと思いますか。
「IOWNグローバルフォーラムの活動は6年が経過しましたが、昨年から『TEAM(テクノ・エコノミック・アナリシス&マーケティング)』という経済分析手法を導入しました。IOWNのメリットを定量化するのが狙いです。光技術の普及という我々の目標は変わりません。
まずはネットワークへ光技術を活用し、次がサーバーのマザーボードへの活用。そして3つ目が光による省電力化です。その最大の推進力となっているのがAIで、学習や推論などAIのあらゆる形での需要が大きなドライバー(駆動力)となっています」
――AIの登場は通信ネットワークにも大きな影響を与えていますね。
「その通りです。ひとつ目はAIのためのネットワークです。AIには数百テラビットの伝送容量が必要なものもあり、そのためのネットワークが必要です。
2つ目がネットワークのためのAI。通信量や機器の状態、温度などをAIが解析することで通信リソースを最適化し、消費電力を抑え、トラブルを事前に予測することができます」
――米NVIDIAが昨年、ノキアに出資しましたが、どんな変化がありましたか。
「NVIDIAもノキアもIOWNグローバルフォーラムのメンバーですので、フォーラム内での協力関係はもちろん、2社間の密接な連携も進んでいます。一般論ですが、モバイルネットワークにもAIエージェントや推論の適用が有望だと考えています。ネットワークのフロントホール(アンテナと局舎の制御装置をつなぐ部分)をAPNで実現する場合、局舎にGPU(画像処理半導体)を配置することでAIエージェントを利用することができ、余った計算能力は外向けのデータセンターとして活用することも可能になります」
――モバイル基地局が分散型のデータセンターになるというわけですね。
「まさにその通りです。IOWNの『O』は『Optical(光)』を表しますが、『W』は何かとよく聞かれます。『Wireless(無線)』の頭文字ではありますが、我々は接続性を意味していると思っています。今の時代、ネットワークがなければ何もできないわけで、光ネットワークを提供することがノキアのミッションだと考えています」
――シドニーでの年次総会で最も興味深かった発表は何でしょうか。
「非地上系ネットワーク(NTN)における光技術の重要性が増していると思いました。地上でもネットワークを光化することで発熱の問題などを避けることができます。ただラック内のボード間を光で結ぶのと遠隔地にあるデータセンターを結ぶのとでは同じ光技術でも異なる対応が求められます。
IOWNを使えば計算用のデータセンターとストレージ用のデータセンターをそれぞれ別個に置くことが可能になるでしょう。このフォーラムは通信事業者の目線で物事を見る傾向にありますが、今後はウェアラブルや眼鏡といった光センサーの技術も重要になってくるでしょう」
――マイニング(採掘)など鉱業分野へのIOWNの活用も話題となりました。
「鉱山には2つの課題があります。まずは現場の作業データをどこに保存するか。鉱山にはデータセンターは置けないので、大量のデータをオフロードする必要があります。
2つ目は採掘装置などの遠隔操作です。危険な現場から人を遠ざける必要がありますが、光技術とAIを使えば、現場のカメラ映像を遠隔からAIが分析して安全対策を施したり、作業の進捗具合を管理したりすることができるようになります」
――光技術は通信衛星をつなぐ通信手段としても有望だと聞きます。
「オーストラリアは欧州からも北米からも離れています。現在は海底ケーブルで接続していますが、ケーブルは海の深いところにあり、国際政治的な要素もからみます。
低軌道や中軌道の通信衛星とHAPS(High Altitude Platform Station=成層圏プラットフォーム)を組み合わせれば、ケーブルの引けないところでも接続することができ、冗長性も確保できます。そうした衛星やHAPSとの間のリレー通信を担う手段として光技術が注目されているといえるでしょう」

