2025年12月14日(日)

トランプ2.0

2025年11月25日

 ロシアのウクライナ侵攻や、中国の対外的脅威増大などについては何も触れられず、最初から最後まで徹底して「アメリカ・ファースト」の意義強調に終始した。

 そして、「私は、諸外国の繁栄のためにわが国民に課税する代わりに、今後はわが国民を豊かにするために諸外国に関税を課すことにする」と宣言している。

対照的な習近平の姿勢

 一方、習近平中国国家主席は対照的に、こうした米大統領の対外コミットメント軽視を見透かすかのように、逆に国際主義重視路線を鮮明に打ち出してきた。

 「国際協調重視の中国」と「一国主義のアメリカ」の違いが端的に示されたのが、先月、韓国で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)への対応だろう。

 習近平氏は韓国・ソウルでの米中首脳会議を終えたその足で、同国慶州でのAPEC首脳会議に臨み、冒頭の演説で「われわれは真の多国間主義を推進し、世界貿易機関(WTO)の核心をなす多国間貿易システムの権威と実効性の強化に取り組む」と力説した。

習近平国家主席(左)も参加したAPEC首脳会談にトランプ大統領の姿はなかった(首相官邸HPより)

 しかしトランプ氏は、ソウルでの日米韓3カ国首脳との個別会談後、APECをすっぽかし、釜山空港に待機するエアフォース・ワンでワシントンに舞い戻った。ロイター通信は、「APECのような多国間外交を軽視するかのように、トランプ氏がアジアから戻った直後に出席した行事は、ホワイトハウスでのハロウィーン・イベントだった」と皮肉って報じている。

 グローバルな関心事である気候変動対策についても、習近平氏は去る9月、国連気候サミットで、太陽光発電の設備容量を6倍以上に引き上げる目標を掲げたほか、11月には、ブラジル・ベレンで開催された国連気候変動枠組み条約第30回条約国会議(COP30)に側近を送り込み、中国の存在感を高めた。トランプ氏は気候サミットにも出席せず、COP30には代表団派遣すらも見送った。

USAIDの閉鎖の間隙に「一帯一路」

 第二次トランプ政権スタート以来、ますます顕著になった対外コミットメント縮小の典型が、米国国際開発庁(USAID)の閉鎖措置だった。

 USAIDは、1961年設置されたあらゆる非軍事の海外援助を取り組む政府組織で、これまで年間予算規模も平均400億ドルに及び、世界最大の対外援助を誇った。米国はこの対外援助計画の下で、アジア、アフリカ、中南米途上国を対象として経済、医療、食糧面などの援助に乗り出し、各国での存在感と影響力を拡大してきた。

 しかし、今年に入り、世界の貧困、人権問題は関心外のトランプ大統領は「国民の税金の無駄遣い」などとして閉鎖を指示、全世界職員約1万人が任を解かれた。

 他方、中国はその間隙を縫うように、USAIDの対抗版ともいうべき「一帯一路」戦略で攻勢を強めつつある。


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