2025年12月14日(日)

トランプ2.0

2025年11月13日

 米国における先月半ばの史上空前規模の「NO KINGS(王様はいらない)」デモは、君主制へ伝統的に反感をもつ国民の良心を反映したものだった。与党共和党陣営内では早くもこの動きが来年中間選挙、そして次期大統領選に及ぼす影響を懸念する声も上がりつつある。

全米に広がった「ノー・キングス」デモ(ロイター/アフロ)

歴史に残る大イベント

 「自分はけっして王様ではない」—トランプ大統領は「NO KINGS」デモ前日の去る10月17日、機先を制し自らのSNSに数回にわたりこう書き込み、参加者の広がりに予防線を張った。

 しかし、当日は首都ワシントンの連邦議会に通じる大通りや、ホワイトハウス近くの公園などに詰めかけた10万人以上の市民が、専制的色彩を強めるトランプ政権に抗議し、「民主主義を守れ」「独裁者は出ていけ」などと叫びながら行進を続けた。

 同時に、ニューヨークのブロードウェー、シカゴ中心部のグラント・パーク、サンフランシスコのマーケット・ストリート、アトランタのシビック・センターなど全米主要都市、町村部合わせ2700カ所以上でも同様の集会やデモ行進が繰り広げられ、結果的に、主催者側の発表によると、約700万人という空前規模の抗議集会に膨れ上がった。

 米国史を振り返っても、建国当時の英国に対する反植民地闘争、19世紀の黒人差別撤廃運動、20世紀の市民権運動、ベトナム反戦、今世紀の女性解放運動など含め、1日のみの集会で参加者がこれほどの規模に達したことはかつてなく、その意味で歴史に残る大イベントであったことは間違いない。

 去る6月に、トランプ大統領が自分の79歳の誕生日に首都ワシントンで強行した大規模軍事パレードに抗議する最初の「NO KINGS」集会が開かれた際は、全米各地で300万人前後の市民が参加した。今回これを大きく上回ったのは、その後、不法移民摘発・追放、政府組織閉鎖と職員大量解雇、主要都市への軍投入、エリート大学弾圧、市民権抑圧、社会・環境関係予算の大幅カットなど、強圧的政策や措置があいついだことで、鬱積した多くの市民の怒りや不満が自然発生的に噴出した現れとみられている。


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