対抗するトランプ
保守系テレビ局として知られる「FOX NEWS」も、「大集会にしては珍しく逮捕者も出なかった」「想定を上回る規模だったが、全体として秩序あるものだった」などのコメント付きで各地の様子を繰り返し放映した。
これに対し、ホワイトハウス当局は、多くのネット・メディアなどを通じ「民主党リベラル集団の騒動」「ごく一部の反愛国的行動」だとして、影響の火消しに回った。
憤懣やるかたない大統領も直後に、自らあえて「King Trump」と塗り立てたジェット戦闘機操縦席に王冠を被って乗り込み、地上の群衆に糞尿らしきものをまき散らすという悪趣味なアニメの「meme(ミーム)」をSNSで拡散させ反発するなど、国内外で大きな話題と論議を巻き起こした。
有識者の一部からは「大統領が自国民に汚物を散布するという前代未聞の珍事」との酷評まで寄せられた。
しかし、ニューヨーク・タイムズ紙などの報道によると、参加者は民主党系のリベラル集団にとどまわらず、一般主婦、教師、医師、弁護士、退役軍人、介護士、学生、実業家、アーティスト、芸能人など党派や人種を超えたあらゆる職業、階層におよび、特定の政治活動家が組織した従来型の抗議集会とは明らかに一線を画するものだったという。
共和党内で起こる「懸念」
問題は、今回の反トランプ集会が、一過性のものにとどまるかどうかだ。
この点で注目されるのが、共和党議会ナンバー・ツーの実力者で保守派の論客としても知られるテッド・クルス上院議員が示した反応だ。同議員は、「ブルンバーグ通信」に対し以下のように語っている:
「このような全米規模の抗議集会は初めてであり、疑いもなく“政治的脅威”だ。われわれは今後の影響について真剣に受け止めなければならない。そこには大変なエネルギーが存在し、怒りの盛り上がりが感じられる。(中略)わが政権に反対する勢力がその怒りを吸い上げてこれほど多くの一般大衆を動員できたとすれば、来年の中間選挙や2028年の大統領選挙はわれわれにとって危ういものになりうる」
「エネルギーにあふれた有権者は、必ず選挙の際に投票所に足を運ぶ。そして私が心配するのは、これまではトランプの再選に満足し、その後の政治参加にはあまり関心を示さない共和党系の有権者がいるのに対し、多くの一般有権者たちが意欲的に投票行動に出るとすれば、われわれに悪い選挙結果をもたらすということだ」
クルス議員がトランプ政権を正面切って批判したのは、これが初めてではない。去る4月には、大統領が諸外国相手に大々的に打ち出した高関税政策について「このような貿易戦争は必ずや、国内に多くの雇用喪失を招き、結果的に26年中間選挙でわが党の惨敗を引き起こすことになる」と警告を発している。
同議員のみならず、共和党一部下院議員の間でも、「NO KINGS」の今後の影響を気にかける声も出始めている。
その一つの理由として、従来型の反政府集会と異なり、今回は、全米の大都市のみならず、ノースカロライナ州ブライソン(人口1500人)、アイオワ州ストームレーク(1万人)、ルイジアナ州ハモンド(2万1000人)、ケンタッキー州リッチモンド(3万5000人)といった、ふだん政治とは無縁とみられる小都市、町村、しかも共和党地盤の地方にまで広がったことが挙げられるという。
