選挙への影響
この点に関連して、トランプ氏の1期目の大統領就任式翌日の17年1月21日に首都ワシントンで行われた女性たちの大規模抗議デモ「Women’s March」が翌年の中間選挙に与えた影響について、一部メディアで報じられている。
当時の集会は、トランプ氏が選挙期間中から女性蔑視の言動を繰り返してきたことをきっかけに、「男女平等の尊重」「女性の権利の向上」「健康保険改革」「環境保護」などを求めて組織的に行われたもので、約47万人近くが連邦議会からホワイトハウスに通じる目抜き通りをデモ行進した。
同時に、全米の約400都市でも集会やデモが繰り広げられ、参加者は合わせて数百万人規模に達した。
そして翌年18年中間選挙では、上院は共和党がかろうじて多数を維持したものの、下院では民主党が逆転して40議席増となり、多数を制した。各州知事選でも民主党知事が新たに7人誕生したほか、州議会でも民主党支配下の州議会を4州増やす結果となり、民主党のシンボル・カラーである“ブルー・ウェーブ”(青い波)の選挙とも呼ばれた。
当時、民主党が中間選挙で健闘した理由について、「Women’s March」をきっかけとして女性たちの政治意識が高まり、そのまま翌年選挙投票日の女性票増加につながったことがひとつのカギとなったといわれている。
社会運動と選挙との関係に詳しいブルッキングズ研究所のダナ・フィッシャー上級研究員は、「ヤフー・ニュース」とのインタビューで当時を回想し、次にように語っている:
「自然発生的な大規模なデモや集会は、時として政治的な活動へと発展することがある。まさに17年の『Women’s March』がそうであったように、それをきっかけとして移民政策、老齢年金削減措置、人権抑圧などに関する政治的主張や要求、ボイコット運動、さらには市、州議会議員、連邦議員への立候補へと拡大していった。怒りや熱意が街頭の行動から中間選挙時の投票所へと駆り立てた。
今回のように平和的で一見静かに行われたデモであっても、抗議とレジスタンスの行動であることには変わりない。それが、ただちにトランプ政権の政策変更につながるわけではないが、街頭での『集団的アイデンティティ』を呼び起こし、やがて選挙に向けた政治行動へと発展する可能性を秘めている」
さらに、カリフォルニア大学アーバイン校社会学部のデイビッド・フィッシャー教授も「社会運動が直面する課題はつねに『その後』だが、今回の各地における『NO KINGS』集会ではすでに、直近の民主党予備選、数週間後に迫っていたバージニアやニュージャージー州知事選などが話題になり始めていた」として、さらに1年後に迫った中間選挙への影響必至との見方を伝えている。
実際、フィッシャー教授が言及した通り、その後、今月4日に投開票されたバージニア、ニュージャージー両州知事選では、「トランプ圧政」を厳しく批判していた民主党候補がいずれも勝利を収めた。また、全米最大票田州のカリフォルニア州でも同日、共和党が猛烈に反対していた選挙区割改変の是非を問う住民投票が実施され、賛成多数で承認された。
この結果、来年中間選挙に向けて同州選挙区割りが一部書き換えられ、下院民主党候補の当選者が「4~5議席」増となる公算が大きくなった。
