2025年10月22日付ニューヨーク・タイムズは、トランプ政権は米国の衰亡を早めているのみならず世界を無秩序の時代に引きずり込んでいると指摘するレベッカ・リスナーとミラ・ラップ=フーパーによる論説を掲載している。
韓国においてトランプと習近平が2019年以来となる首脳会談を行う。米中首脳は両国関係を安定させることを望んでいるが、仮に、米中貿易戦争が緩和されたとしても、米国の経済面での指導力への信頼を回復させることにはならない。
トランプは、極めて高い関税を懲罰的、一方的かつ予測できない形で課すことで、米国が80年間主導してきたルールに基づく国際経済秩序をひっくり返してきた。戦後、米国が自らのパワーと特権を増進させるために設計した規範と制度に対するトランプの攻撃は、関税戦争だけではない。米国は、次に何が起こるのかの計画もないまま、自らの衰亡を早めているのみならず、世界を無秩序の時代に引きずり込んでいる。
今後数年間は、混沌とした空位期間となると予想されるが、その輪郭がおぼろげに見え始めてきた。米国は、強大であり続けるだろうが、気まぐれで、パフォーマンス重視の国となろう。
国連や世界貿易機関(WTO)といった古い制度は存続し続けるものの、各国が競争や紛争に向かう自然の傾向を克服する能力は低下するだろう。パンデミック、気候変動、AI といった共通の課題への対応は停滞してしまうだろう。
こうした無秩序な世界は確実により暴力的なものとなろう。今年、南アジアで、東南アジアで、中東で、アフリカで流血の年となった。トランプは平和を望んでいると言うが、最近のガザでの停戦を除けば、和平合意を持続させるための継続的な取り組みよりは、ノーベル平和賞を得るための働きかけに注力しているように見える。
