FP誌(Web版)は10月30日付けで、トランプ大統領が核兵器の実験を戦争省に指示したとSNSに投稿したことに関し、それが核弾頭の爆発について述べたのかは明確ではないと指摘するシャヒル・シャー(戦略・技術研究所シニア政策アドバイザー)による論説を掲載している。概要は次の通り。
トランプ大統領は、最近のソーシャル・メディアへの投稿で、ロシア・中国と「同等の立場で核兵器の実験を再開するように戦争省に指示した」と述べたが、大統領府は直ちにその内容を明確化すべきである。その後、さまざまな報道がなされているが、この投稿自体というよりはその曖昧さが極めて危険である。
「核兵器の実験を再開する」という文言にはいくつもの解釈が可能である。第一に、決意を示すための政治的ジェスチャー、第二に、核兵器を搭載可能な運搬手段についての実験を増加するように指示すること、第三に、未臨界のシミュレーション実験を拡充するように指示すること、そして、第四に、最悪の事態であるが、核弾頭の爆発実験を許可することである。
これら四つの内、最初の三つは、議論すべき政策の選択肢である。一方、四番目は米国の政策と国際規範に対する大きな逆行である。メディアも、外交官も、議員もこの問題を緊急かつ重大なものとして取り扱うべきである。
なぜ四番目であるかどうかが重要であるかと言えば、米国は爆発性の核実験の自発的なモラトリアムを1992年以来、遵守してきたからであり、包括的核実験禁止条約(CTBT)を批准はしないものの、その趣旨および目的に従ってきたからである。
米国が爆発性の核実験を行う場合には、他の核保有国が同様の措置をとるよう挑発することは確実であろう。米国、ロシア、中国の三者による核の競争となり、核実験の再開から最も利益を得るのは中国となろう。
米国は前述の通り、1992年以来、核実験のモラトリアムを行ってきており、CTBTを支持してきている。今世紀に入ってから、核実験を行ったのは北朝鮮のみであり、米国が核実験を再開すれば、数十年にわたる米国の核不拡散への信頼性が損なわれることとなる。また、同盟の信頼にも悪影響がある。
こうした状況で何をすべきであろうか。第一に、大統領府は「実験」が何を意味しているかをはっきりさせなければならない。運搬手段の実験を頻度や強度を高めるということであれば、なぜ現状が不十分なのかを説明すべきである。
シミュレーションなり未臨界実験を拡充すべきというのであれば、それが爆発性核実験と何が異なっているのかを説明すべきである。仮に、爆発性核実験が考慮されているのであれば、政府は、その理由を説明し、不可逆的な措置をとる前に、技術的・法的主張を示すべきである。
