2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年10月13日

 ニューヨークタイムズ紙は、9月22日付けで、明年2月に期限を迎える新戦略兵器削減条約(新START)における戦略核兵器の上限を1年延長することをプーチン大統領が提案したことについての解説記事を掲載している。概要は次の通り。

(Contributor/Gerasimov174/gettyimages・ロイター/アフロ)

 ロシアのプーチン大統領は、9月22日、配備済みの長距離核兵器の数についての現行の上限について、米国が同様の対応を取るのであれば、さらに1年間延長する用意があると述べた。これは、ロシアと米国に、両国間に残る最後の軍備管理条約に代わる新たな条約を交渉する時間を与える提案である。

 ロシア大統領府で行われた安全保障会議の会合において、プーチン大統領は「戦略兵器についての更なる軍拡競争を挑発することを避けたい」と述べた。一方、プーチン大統領の動機には、ウクライナでの戦争によってロシアの国庫が枯渇しつつある中、高額の軍備拡張を避けたいことや、戦争以外の点で米国を協議に引きずり込みたいことなど、さまざまな要因が含まれているとみられる。

 また、トランプ大統領が「ゴールデン・ドーム」と呼んでいるミサイル防衛システムを遅らせ、または中止に追い込むことも狙っているのではないかと専門家は見ている。プーチン大統領は、「米国が同等の措置をとるとともに、現行の抑止バランスの潜在能力を害するような措置を取らない場合に限って、こうした措置が実行可能となる」と述べた。

 新STARTが明年2月に期限切れとなった後、米国としてどうするつもりなのかについて、トランプ大統領は実質的に何も語っていない。新STARTに代わる新たな条約を交渉するには、数カ月ないし数年を要することが予想され、かつ、(批准には)米国上院で3分の2の賛成が必要で、それは現在の米国の政治状況では実現の見通しを得ることが困難である。

 新STARTは、米国とロシアが配備しうる戦略核弾頭の数を1550に抑えるとともに、その運搬手段の数を制限するものである。一方、同条約は、ロシアがいろいろな局面でウクライナでの標的に対して使用の威嚇を行っている戦術核兵器や、ロシアが近年開発に力を入れている核魚雷や宇宙配備の核兵器は対象としていない。


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