ウクライナに近い中・北欧諸国へのロシアと思われるドローン機やロシア戦闘機の領空侵犯が頻発している。ロシア側は一連の領空侵犯をすべて否定しているが、挑発行動による北大西洋条約機構(NATO)の危機管理対応を事前観測とウクライナから視野をそらせようという意図との見方が強い。欧州諸国の対応が鈍いと見てか、ロシアはウクライナへの攻撃を激化させている。
そして欧州連合(EU)の有効な対応はどこまで可能なのか。10月1日にはデンマークのコペンハーゲンで急遽EU首脳会議が開催されたものの、加盟国が一致した緊急対応手段が決定されたとはいいがたかった。欧州の闇は深い。
頻発する領空侵犯と飛び交う批判
デンマークのコペンハーゲン空港上空に9月22日夕方、複数機のドローンが飛来し、約10便が欠航となった。24日から25日にかけても、西部の空港や軍事基地で複数のドローンの飛来が確認された。
それに先立ちポーランド領空へも10日未明にドローンの侵犯が確認され、ポーランド軍が撃墜した。13日にはルーマニアにも2機飛来したことが確認されている。
ロシアの挑発行為はドローンにとどまらず、戦闘機のNATO領空無許可侵犯も頻繁化している。エストニアの首都タリンから100キロメートル(km)離れたバルト海フィンランド湾Vaindloo島の領空をロシアのミグ31戦闘機が12分ほど侵犯した。ロシア機のエストニア領空侵犯は今年に入って4回目である。
ポーランド領空侵犯直後、英国のスターマー首相は「前例のない明らかな(ロシアの国際法)違反」と非難、ドイツのメルツ首相も「ロシアの攻撃的行動」と断定した。欧州各国は、ニュアンスは違うものの、ロシアへ批判的発言をした。
エストニア領空侵犯後の23日、NATO条約第4条に基づき、最高意思決定機関である北大西洋理事会の緊急会合が開催された。ルッテ事務総長が事件を受けて開いたもので、「人命を危険にさらす行為だ」としてロシアを強く非難、「意図的であろうとなかろうと、ロシアがこうした危険な行動を続けることは望まない」と強い批判の姿勢を強調した。
しかしこの一連の挑発とも思われる侵犯行為をロシア側はすべて否定している。ミグ戦闘機のエストニア上空侵犯についても、ロシアのポリャンスキー国連次席代表は、領空侵犯の証拠はないと否定、国連安保理の「不条理な芝居」に加わる気はないと反論した。
