ワシントンDC大統領府で8月17日に開催された米国のトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の二国首脳会談に続いて、欧州連合(EU)および北大西洋条約機構(NATO)首脳との会談が行われた。フォンデライエン欧州委員会委員長、ルッテNATO事務総長、スターマー英国首相、マクロン仏大統領、メルツ独首相、メローニ伊首相、ストゥブ・フィンランド大統領ら欧州首脳がトランプ大統領を囲んで議論した。
今回の米・ウクライナ首脳会談では、2月に両大統領が険悪な雰囲気の中で物別れになったような雰囲気とは打って変わって、ゼレンスキー大統領が同夫人からのメラニア米大統領夫人への親書を手渡したときに、「私にはないのですか」と冗談を言うほど和やかな雰囲気の中で行われた。ゼレンスキー大統領は「(アメリカに対する)感謝」という言葉を10回も使った。
2月の轍から両者が学んだといえるが、裏返して言えばロシアの攻勢を前に口論している余裕がないほどウクライナは切羽詰まった状況だし、米国もこの戦争の終結への目途を一刻も早くつけたいという意図があったのはたしかだ。しかし米露会談の「成果」を受けて開催された一連の会談での今後の停戦・和平への見通しの議論は、21日ロシアのラブロフ外相が露・ウ首脳会談の早期開催を実質的に否定するような発言で水泡に帰したかのようだ。それでも事態は依然として厳しい。五里霧中の手探りのジレンマの「もがき」はまだまだ続きそうだ。
米露会談とトランプの真意、馬脚を現したロシア
2014年に遡るウクライナ戦争をめぐる国際構造は依然として不変だ。根本的な解決への道はその構造を動かすことだが、不可抗力的な事件でも起こらない限りそれはなかなか難しい。
弥縫的な状況対応的な前進しかなく、少しでも突破口を開きたい。それが現状であり、今回の一連の会談もその模索の試みの一環だ。
詳しく論じる余裕はないが、読者には思いだしてほしい。14年のロシアのクリミア半島進出と22年ロシアのウクライナ侵攻の理由としてプーチンが掲げたのは、ウクライナのEU加盟とNATO加盟を阻止することが直接的な理由だった。いずれもロシアの国境を脅かす、西側の影響力浸透への脅威をプーチン大統領はあげていた。
実際には勢力圏としての領土だ。ロシアにとって胸先三寸のウクライナまで来たということだ。それが中心的論点であることは変わらない。
