米アラスカ州で14日に行われた米露首脳会談は、米側が目指した停戦条件の合意といった目標には遠く及ばない形での幕切れとなった。米側はロシアの侵攻を、事実上経済面から支えたインドや中国などへの大型追加関税を振りかざして交渉に臨んだが、米政権の迷走が浮き彫りになった。
そもそも関税措置は、ロシア支援国への圧力という側面より、貿易面で米国に有利な環境に導く狙いが伺え、会談後にトランプ氏が制裁強化を打ち出さなかった事実は〝腰砕け〟の印象すら与える。ロシアのプーチン大統領は、中国の習近平国家主席、インドのモディ首相と引き続き緊密な連携を続け、3首脳は8月末には中国・天津市で直接顔を合わせる。トランプ関税は結果的に、中国、インド、ロシアの関係強化を促した可能性すらある。
追加関税に怒り
「インドの農業、漁業、畜産従事者に対する有害な政策には、壁のように断固として立ち上がる」。インドのモディ首相は同国の独立記念日にあたる8月15日、首都ニューデリーで行われた演説で聴衆に対し、激烈な調子で強調した。米国の追加関税をめぐる交渉で、自国産業を守る姿勢を国民にアピールした格好だ。
トランプ政権が8月6日に打ち出した、インドに対する計50%の関税は、インド社会に強い波紋を呼んでいる。
トランプ氏は7月末、インドに対し25%の追加関税を課すと発表。さらに8月上旬には、インドが購入するロシア産原油の代金がウクライナ侵攻を支えているとして、追加で最大25%の関税をかけると表明した。
対象は繊維や衣料品、宝石、革製品、機械類、自動車部品、農産品などと多様だ。さらにトランプ政権は、インドが得意とする医薬品の輸入に対して段階的に250%、国産を目指す半導体も100%の関税をかけると表明するなど、インドを強く揺さぶる内容となっている。
実際、インドはロシアのウクライナ侵攻開始以降、ロシア産原油の輸入量を急増させてきた。2022年度の輸入は前年度比で10倍超に増大。24年にインドが輸入した原油のうち、約4割はロシア産だったとされる。
インドをめぐっては、さらにその原油を精製して「インド産」として対露制裁をかける欧州などに輸出しているとされ、インドを経由して対露制裁が〝骨抜き〟にされている実態が浮かび上がる。
