インドをめぐっては、ヒマラヤ山脈地域の領土問題を背景に首脳の訪中を長年見送ってきた背景があるが、その状況に変化が生まれた格好だ。関税でインドに圧力をかける米国に対するけん制の意味合いがあるとみられる。
領土問題をめぐっては、すでに水面下で高官レベルでの協議も進められている。さらにプーチン氏も、年末にはインドを訪問する計画があるとされる。
プーチン氏はSCO首脳会議に加え、中国に滞在を続けて9月3日に北京で行われる軍事パレードにも出席するとみられている。エネルギー資源の輸出国であるロシアと、その大量消費国の中国、インドが連携するのは自然な流れで、トランプ関税は民主主義陣営であるはずのインドの、中露への接近も招くという結果を招いている。
苦しむロシアに〝手をさしのべた〟首脳会談
米露首脳会談でトランプ氏を手玉に取ったプーチン氏だが、国内の状況は良好だとはいいがたい。戦況をめぐっては、ウクライナ東部戦線で優位にあると伝えられているものの、人的損失もいとわない戦法で100万人規模の死傷者を出し、兵器の損失も激しい。
北朝鮮軍の支援を受けなければ、クルスク州の防衛も十分にはできないのが実態だ。ウクライナ側の抵抗は続き、戦争終結のめどは一向に見えていない。
経済面では中国、インドなどによるロシア産原油の購入増や、軍事支出の膨張で経済成長を維持していたものの、労働人口の減少やインフレ抑制のための高金利政策で企業活動が抑制され、経済成長率は昨年の4.3%から、今年は1%程度に大きく鈍化する見通しだ。
そのようななか米露首脳会談でプーチン氏は、トランプ氏から対露制裁を強化しないとの言質を引き出し、さらに中国やインドなど友好国が、ロシアにさらに接近する環境を整えることに成功した。
18日にはウクライナのゼレンスキー大統領が訪米し、トランプ氏との会談にのぞむなど、3年半を超えた戦争をめぐる動きは今後も先が読めない状況が続く。ただ、中途半端な制度設計で打ち出した追加関税をめぐる動きは、現状では米国に対する各国の怒りを招き、ロシアとの離反とは逆の効果を生み出しかねない事態を招いている。
