高まるドローン対策はコストとの戦い
ウクライナ政府の報告では、この1年以上ロシアからのドローン機を毎夜10機程度撃墜している。しかし失敗例があるはずなので、実際に侵入を図ったドローンはもっと多いだろう。
今回のポーランドに対する攻撃でもロシア製のおとりドローン「Gerbera(ガーベラ)」型16機は燃料切れでポーランド領空圏に到達しなかったが、そのうちの1機はポーランド領土内250キロメートルまで飛来したといわれ、一部はウクライナ支援のためのNATO基地に向かっていたと、ドイツ『Die Welt』紙は伝えた。
もはや日常化したドローン攻撃への対応措置は急務である。NATO諸国の装備はドローンのような小型航空機攻撃への対応を想定していない。ドローン攻撃に対する防衛体制としては、ドローンの「壁(防壁)」、ヘリコプター、さらに戦闘攻撃ヘリコプター、巡航ミサイル攻撃戦闘機の配備などが想定できる。
しかし小型兵器ドローン攻撃のための軍装備は費用対効果の点からは、検討の余地があると慎重な態度だ。実際にウクライナでは毎夜一基10万ユーロのミサイルが何百万ユーロ分もドローン攻撃に対して費消される。効率的立場からドローン機の迎撃は、迎撃すべき場合とそうでない場合の選択が必要だと新しく就任したアレックス・グリングヴィッチNATO欧州連合軍最高司令官も指摘する。それは同時にNATOのコスト・予算問題とも重なる。
したがってNATO諸国のこの種の戦闘に対応した防衛システムも必要とされており、とくにウクライナを中心としたポーランドやリトアニアとの作戦装備協力の重要性が再認識されてもいる。中でも注目を浴びているのが、“Sky Fortress”や”Zvook”と呼ばれる「音響ピックアップ・センサー」を用いたドローン探知システムだ。
このアンテナ装備のひとセットの価格は数百ドル程度の廉価であり、ネットワーク全体でも米国迎撃ミサイル「パトリオット」一基340万ユーロにも届かない価格だ。このシステムはドイツのラムシュタイン基地で試験済みで米国の支援を得ている。すでにウクライナではこの装置は600セット購入されており、ほかのNATO加盟国も関心を示しているという。
また対ドローン用の大型機関銃装備の兵士の養成などもその実効的な対策として考えられている。さらに「ドローンの壁」とよばれる迎撃目的のドローンの事前装備・敵機探知時即射システムが防衛力の脆弱な地域に配備される。
