2025年12月5日(金)

世界の記述

2025年10月8日

軍事的示威行動の一環か

 一連のロシア機領空侵犯はもっと別な意味も問われている。このころロシアとベラルーシの軍事合同演習“Zapad2025”が実施されていたが、これは実施を予定されていたNATO軍事演習『Neptune Strike』と対になっている。

 ロシア側とNATOが軍事力を誇示し、プレゼンス強化のための示威行為を意図していた。これは朝鮮半島周辺で米韓合同軍の演習と北朝鮮のミサイル実験が毎年9月に競合するかのように実施されることと類似している。

 西欧諸国はロシアのさらなる西側侵攻を懸念しているのだが、今回のロシア側の合同演習は規模が小さかった。21年の時の兵士20万人に対して今回は1万5000人にとどまっていた。

 対するNATOの『Neptune Strike2』(今年2回目の大規模海軍合同演習)は8月初め北海・バルト海での海軍演習で、スウェーデン・フィンランド・ドイツの多くの艦船、フランスの多目的フリゲート艦Fremm、米国空母「ジェラール・フォード」と駆逐艦が参加してロシア側に劣らない規模で実施され、9月下旬今年3回目の『Neptune Strike3』はイタリアとトルコ海軍を中心に加盟13カ国兵員1万人の水陸両用軍の演習が実施された。こうした軍事的示威行動の枠組みとして一連のロシアによるドローンや戦闘機の領空侵犯が行われたともみられている。

加速化するロシアの攻撃

 10月に入ってロシアのウクライナ攻撃、特にドローンの大攻撃が繰り返されている。一晩で500機が飛来したとも伝えられ、犠牲者も日ごとに増加している。

 一連のロシアの攻勢は欧州諸国が推測したように、EU各国の対応を観測することにあったといわれる。しかし実際にはEUはドローン攻撃に対する意思決定機能の遅延や防備体制・危機管理の不十分さを露呈した形となった。

 9月末にはサンクトベテルスペルクを出港してバルト海を通過、ドーバー海峡ではフランス海軍の臨検まで受けたロシアものと思われるタンカーがジブラルタル海峡を抜けて立ち去った。ロシアの「影の船団」、フランスメディアでは「ファントム(幽霊船)船団」と呼ばれる船籍不詳のタンカーだ。

 ウクライナ戦争の制裁で原油輸出を禁止されているロシアが船籍を隠したり、偽ったりして密輸に従事するタンカー船団で、400隻以上あるといわれる。毎日10~15隻はドーバー海峡沖を航海しているといわれるが、話題を提供したのは、「バラカイ(BORACAY)」という船長244mのタンカーだ。

 フランスの専門家は、「コペンハーゲン・オスロ空港上空に飛来したドローンがサンクトペテルスブルグやロシア国境から1000kmも離れたNATO領域まで何度か飛来し、帰還することが可能だとは思えない」と分析しており、この「バラカイ(BORACAY)」が移動しながらドローン攻撃を仕掛けたという見方が有力になった。


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