2025年12月11日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年11月20日

 トランプ発言以降、核実験再開に強い危機感を持ち、反対キャンペーンを展開した米国の軍備管理協会(ACA)のダリル・キンボール会長もトランプ発言について「誤解に基づいて」と述べていた。

気まぐれや誤解ではすまされない

 トランプのSNS投稿にあった、(他国と)「同等の立場で」との文言は、第一期トランプ政権において、2018年に米国が中距離核戦力全廃条約(INF条約)から離脱を表明した際のことが思い起こされる(19年に離脱が発効)。その際、ロシアが条約に違反して同条約が禁じている中距離ミサイルを開発・配備していることが離脱の理由とされた。

 また、米国とロシアが同条約によって中距離核戦力が持てないことになっているにもかかわらず、中国にはそうした規制が一切課されていないという不均衡な状況を変えることも念頭に置かれていた。

 第一期トランプ政権は、核問題については専門家が議論を付き合わせて政策をまとめる政権であり、同政権下で策定された18年核態勢見直し(NPR2018)も核専門家によるプロフェッショナルな文書であった。第二期トランプ政権は、第一期政権とは異なり、大統領のワンマンの性格が強まり、トランプの周囲にはイエスマンしかおらず、皆が大統領の一挙手一投足を見守るような政権になった。

  しかし、核政策は大統領の気まぐれや誤解によって右往左往することの不都合が余りにも大き過ぎる分野である。今回のトランプのSNS投稿は、そうした懸念が表面化した事例に思える。

 10月30日のトランプ大統領のSNS投稿から11月2日のライト長官の発言まで、どのような経緯があったのかの詳細は不明であるが、トランプの「勇み足」を政権内で専門家も交えて軌道修正するプロセスが行われたことが想像される。それは、最低限のチェック・アンド・バランスが保たれていることを示唆するが、危ういものを抱えていることも否定できない。

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