アジア~ヨーロッパ~アフリカにまたがる巨大経済圏構想「一帯一路」戦略は、習近平氏が2013年提唱以来、21年時点で対象はすでに140カ国、32の国際組織におよび、その後も広がりを見せている。
中国は国連外交でも、主導権を握りつつある。とくに、代表権回復50周年となった21年を契機に、国連各分野での活動を活発化させてきた。
王毅・政治局員兼外相も当時の関連行事での演説で、「この50年、中国は一貫して多国間主義の旗を高く掲げ、国連を中心とする国際システムの堅持と国際秩序の維持に取り組んできた」として、今後のさらなるコミットメントを確約している。
これに対し、トランプ政権は毎年の国連拠出金を大幅カットし、国連代表部を格下げするなど、国連軽視が目立っている。
現実化しかねない台湾の「疑米論」
しかし、何よりも日欧同盟諸国にとっての最大の不安材料は、トランプ政権による自由主義陣営防衛に対する一貫性あるコミットメント欠如だ。代わって前面に出てきたのが、“ディール外交”にほかならない。相手が同盟国であるかどうかは二の次にして、すべての国との関係を金銭の絡んだ取引とらえ、米国にとって有利な条件であれば対象がどの国であれ、手を結ぶ割り切った手法を意味している。
この“ディール外交”を一番気にしているのは、台湾だろう。なぜなら、トランプ氏は台湾に対してはこれまで、防衛負担増の要求を繰り返し、先端半導体事業に関し「米国からの技術を盗んだ」と批判する一方、「米国による台湾防衛」については大統領就任以来、一度も明言したことがないからだ。
この点、バイデン前大統領は「台湾防衛」に4度言及している。この結果、台湾内では最近、「疑米論」が盛んになりつつあると伝えられる。「疑米論」とは、いざという時にアメリカは果たして身を挺し台湾を守ってくれるのか、という率直な懐疑論だ。
台湾側の不安は、ホワイトハウスのみならず、米議会にも向けられている。1期目のトランプ政権下では、少なくとも共和党上下両院議員の多くは、台湾を含む「自由主義陣営防衛」の重要性に重きを置いてきた。ところが、2期目に入り、大統領が強権を振い始めて以来、こうした議員たちも報復を恐れて独自の主張を引っ込め、ホワイトハウスの言いなりになる傾向にある。
伝統的に内政重視の民主党議員の間では、もともと台湾防衛に対する積極論は少ない。 こうしたことから、ワシントンの軍事専門家の間では、「もしも」の事態を想定し、仮に習近平体制が台湾侵攻を決断するとすれば、その時期は「トランプ政権の任期中」との見方がある。
