だが、グリーンランドはデンマーク領である。その領有は米国と欧州の相互不干渉という発想とは性格は異なっている。この場合は、モンロー主義というよりは帝国主義的な発想の方が強いと考えた方がよいかもしれない。
またモンロー主義という場合の前提として、米国は他の国とは違うという例外主義の発想があった。内政不干渉を原則とする伝統的な国際政治の基本原則に反してベネズエラに介入したり、同盟国の領土の領有を掲げるという、通常の国であれば行うことのできない行動を米国だけは取ることができるという発想は、例外主義の発想そのものだろう。
だが、この例外主義の前提も時代によって変化している。基本的には米国の卓越性を前提としつつも、米国の優れた理念を広めるという発想が表明されていたことは指摘することができるだろう。だが、トランプ大統領の対外政策には、そのような側面は非常に弱いといえる。
例外主義は認められないソフトパワーの欠如
いずれにせよ、トランプ政権の外交方針によって、米国の道徳的リーダーシップは大きく低下したと言わざるを得ない。歴代の大統領によって提唱されてきた他国への内政干渉は、もちろん批判の対象ではあり続けてきたが、米国が掲げる自由や民主主義、法の支配などの理念に共鳴する人々の間で、その例外主義的発想が支持、あるいは容認されることはあった。そのような理念に基づく米国の力は、軍事力や経済力とは位相の異なるソフトパワーだという主張も、ある程度支持されてきた。
だが、イラク戦争の際には軍事力の卓越性を背景に、ソフトパワーを無視して単独で米国が行動した結果、米国に対する支持は弱体化した。軍事的にも経済的にも米国にとって脅威とはなりえない中南米の国に対し、国際法上の根拠が疑われるような介入を行ったトランプ政権の行動も、同盟国の領土の領有を求める主張も、同様に米国への信頼度を大きく低下させたと言えるだろう。
ウクライナ侵攻を巡るロシアとの交渉を米国に頼っている欧州諸国が対米批判でまとまることができない状況だが、これは、米国の行動が容認されたことを意味するのではない。米国が唯一の同盟国である日本も、アジア太平洋の状況を考えれば米国を批判するのは現実的ではない。とはいえ、自由や法の支配を外交の基本理念として掲げている日本は、それらの理念の重要性を掲げ続ける必要があるといえるだろう。
