2026年1月10日(土)

キーワードから学ぶアメリカ

2026年1月9日

 しかし、フロンティアが消滅し、科学技術がより進展した20世紀には、この解釈は変化する。とりわけセオドア・ルーズベルト大統領は、中南米は米国の裏庭であるという発想を強く持ち、武力を背景に要求をのませる棍棒外交をカリブ海で展開した。これは、西半球に対する欧州の介入を嫌うモンローの発想とは違い、西半球に対して米国が大きな影響力を行使しても良いのだという認識の表れであり、この考え方は、モンロー・ドクトリンのローズベルトの系(Roosevelt Corollary to the Monroe Doctrine)と呼ばれるようになった。

帝国主義的な拡張主義の要素も

 中南米を米国の裏庭ととらえる考え方は、続くウィリアム・タフト大統領やウッドロー・ウィルソン大統領にも継承された。ウィルソン大統領は、自由や民主主義などの米国的理念を中南米諸国に広げることを重視し、その外交政策は宣教師外交と呼ばれた。

 このような米国の影響力の拡大は、例外主義的な発想に加えて、帝国主義的な発想を伴っていた。もっとも、先住民の領土を収奪した19世紀とは異なり、20世紀以降の米国では他国の領土を領有する発想は弱くなっている。

 キューバやフィリピンなどの領土を抱える機会を持っていたにもかかわらず領有を放棄しており、植民地化しようとする発想は強くなかった。これは、建国の理念から植民地主義を嫌う発想が強いことに加えて、植民地統治に伴う行政的、軍事的コストを避けて、非公式的に帝国支配を行うことを好んだということなのかもしれない。

 いずれにせよ、20世紀以降も、拡張主義の行動と、米国の優れた理念を広めるという例外主義の発想は、米国の外交政策の基調になっていた。これは、イラク戦争の開戦理由とされていた大量破壊兵器が存在しないと判明して以降、ジョージ・W・ブッシュ政権がイラクに自由と民主主義を拡大することが戦争目的だと公言し始めたことにも見出すことができるだろう。

 これまで見てきたように、モンロー主義の意味する所は、時代によって変化している。とはいえ、帝国主義的な拡張主義と例外主義的発想を前提にしていることは指摘できるだろう。

トランプ外交の異なる点

 それでは、トランプ政権の外交方針をモンロー主義として説明するのは適切だろうか。これについては、評価が非常に難しいと言わざるを得ないだろう。

 モンロー主義を米国と欧州の相互不干渉主義と捉えるか、西半球からの欧州の排除ととらえるかで、グリーンランドの問題の評価は変わってくる。グリーンランドを西半球と捉えるならば、グリーンランドの領有はモンロー主義の一環として位置付けることができるだろう。


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