私たちは、知らず知らずのうちに大規模な搾取に加担してしまっているのでしょうか。また、これからの社会で求められる倫理とはどのようなものなのでしょうか。本コラムでは生成AIが抱える問題点に触れながら、これからの社会に必要な「倫理的創造性」について迫ります。
*本記事は青山学院大学准教授の河島茂生氏の著書『生成AI社会 無秩序な創造性から倫理的創造性へ』(ウェッジ)の一部を抜粋・編集したものです。
創造性への社会的ニーズが高まるなかで生成AIが登場しました。生成AIは、以前から業界のなかで話題になることはありましたが、広く一般的に知られることとなったのは、Dall-E 2やMidjourney、Stable Diffusionといった画像生成AIが出た2022年といえるでしょう。
「大学を油彩で描いて」「脳科学が創造性を活性化することをテーマにした絵を」と打つと、わずか数分間で見事に絵が生成されます。画風も合わせられるので、「ピカソ風に」と打ち込むと、それっぽい画ができあがります。音声生成AIや3Dモデル生成AI、動画生成AIも発表されはじめています。
生成AIのなかでも、2022年の暮れに出たChatGPT、その後に発表されたGPT-4は、特に世界中の話題をさらいました。その2年前に出たGPT-3は、業界や研究者の間では話題になりましたが、一般の人々の注目を大きく集めることはありませんでした。しかしChatGPTは、公開からわずか2ヶ月間で1億ユーザに達しています。
あまりにも簡単なインターフェースで、とてもなめらかな文章を返してきます。翻訳や要約もでき、コンピュータ・プログラミングも可能であるということで衝撃をもって迎えられました。アイデア出しにも小説執筆にも使えます。メールの文章や読書感想文、アウトライン、タイトルの作成にも使えます。文章のトーンを変えることもできます。
多くの言語に対応しており、スペイン語やドイツ語、フランス語、アラビア語など50以上の言語が使えます。プログラミング言語についても、JavaやPythonだけでなく多数の言語に対応しています。
詳しい技術仕様は公開されていないものの、GPT-3がウェブ上の45TBほどの大規模なテキストデータを約1750億のパラメータを使って学習したモデルでしたので、ChatGPTやGPT-4は、それ以上の規模になっていることは確実でしょう。
GPT-4の訓練にかかる計算量は、2024年6月時点で世界4位にランクインしている日本のスーパーコンピュータ富岳を1年間専有しないと実現できないレベルです(松岡ほか 2023)。