文章作成から数学的処理まで、活用範囲を広げる「会話型AI」
ChatGPTのような会話型AIは、単独で使うだけでなく他のソフトウェアと組みあわせて使うことができます。マイクロソフトは、サーチエンジンのMicrosoft BingにChatGPTを組み入れました。これまで私たちはサーチエンジンで調べものをしていましたが、今後は、AIとチャットしながらいろいろなことを調べたりすることができます。
Microsoft Bingでは、簡略化されているものの文章の生成に使った参照元も示されるので、参照元にアクセスして内容を確認したり生成物の信頼性を判断することもできます。グーグルもサーチエンジンに生成AIを組み入れはじめています。
また生成AIは、サーチエンジン以外にも他のソフトウェアと連動させることで性能が一気に向上します。数学的処理は、会話型AIだけでは苦手といわれていましたが、数学のソフトウェアと組みあわさることで問題は解消されました。
マイクロソフトやグーグルのサービスにみられるように、文章作成や表計算、スライド作成のソフトウェアなどと連携することで活用できるタスクも広い範囲にわたります。
ワープロの文章を自動的にスライドに変換したり、逆にスライドの資料を自動的にワープロの文章に変換してくれるだけでも、大幅に作業時間を減らすことができます。
実際、同じ内容にもかかわらずフォーマットの変換をしなければならないことはよくあります。少なからず手間がかかるので、正直にいえばうんざりすることもあります。自動で変換してもおかしくなり、それを直すだけでかなりの時間がかかってしまうことも起きます。こうしたフォーマット変換が効率化するだけでも、とてもありがたいことです。
作業を簡単にすることは、それだけで大きなインパクトがあります。たとえば、私が大学に入った1990年代後半は、まだダイヤルアップ接続でインターネットを利用していました。よく電話線を抜き差しして、メールを取り込んでは接続を切り、メールの下書きを一気に書いて、ふたたび接続して一気に送信したものでした。
複雑なプロセスではありませんが手間がかかります。それが常時接続となり、実に気軽にインターネットが利用できるようになりました。
また2000年ごろまでは、掲示板以外で自分の発信をするためには多くの場合、自分でドメインを登録してサーバを借りHTMLなどを書かなければなりませんでした。ブログも、最初はサーバにソフトウェアをインストールしなければなりませんでした。
しかし、次第に会員登録するだけで自分のブログをもて発信できるようになりました。日本にはテキストサイトがありましたので、ブログによってインターネット上の発信がどれだけ変化するかは定かではありませんでしたが、多くの人がブログを開設しました。
その後、SNSが流行り、日本では140字の文字制限のあるTwitter(現・X)が人気を博しました。画像・動画中心のSNSも、スマホのカメラ機能と合わさることで、実に簡単にコンテンツを作成し発信できるようになっています。
Domo(2022)の調べによると、YouTubeでは、わずか1分間で500時間分の動画がアップされ、Instagramでは1分間で6万6000枚の写真がアップされています。Facebookでは1分間に170万のコンテンツがアップされ、Twitterでは1分間に34万7200のツイートが行われています。2013年時点でも膨大なデータでしたが、今ではさらに増加しています。
作業を簡単にすることは実にシンプルなことです。しかし、それがインターネットのコミュニケーションを大きく変えてきました。同様に生成AIも、実に簡単なインターフェースで、これまで行ってきたタスクを簡単にするため、大きなインパクトを与えるでしょう。データ量もさらに増加するに違いありません。