GPTが職業タスクに与える影響
次の図は、この論文にのせられていたものです。アメリカのO*NET(occupational information network)という職業データベースを使って分析が行われています。そのデータベースには実にさまざまな職業がのせられていて、職業ごとのタスクが20から30ほど記されています。
エクスポージャーと書かれている横軸にパーセンテージが表示されています。このエクスポージャーは、タスクを終えるまでにかかる時間が50%以上減少する──たとえば1時間かかっていたタスクが30分以内に終わる──可能性を指しています。
どのような職業でも、複数のタスクから成り立っており、タスクのなかには自動化しやすいものとそうでないものがあります。したがってエクスポージャーは、必ずしも仕事がなくなることを意味していません。そういった理解でみてもらえればと思います。
この図にはα(human)・β(human)・ζ(human)とありますが、この(human)がついているのは、人が評価基準の表を使い、大規模言語モデルによってどれほど仕事のタスクが影響を受けるかを推定したものです。
アルファは、大規模言語モデルを単独で使った場合、ベータはこれまでのソフトウェアに大規模言語モデルをある程度埋め込んだ場合、ゼータは既存のソフトウェアに大規模言語モデルを大きく埋め込んだ場合です。
一方で(model)がついているほうは、人ではなく、大規模言語モデルのGPT-4を使って大規模言語モデルによるエクスポージャーを予想した場合です。こちらもアルファ、ベータ、ゼータと分けて予想されています。人が予想した場合と、GPT-4が予想した場合で、それほど大きな差は出ていません。
▲マークで表されているベータでみると、その職業のタスクの10%が影響を受ける職業は約8割と推定されています。これは、全職業の8割にのぼる職業が、それぞれの全タスクのうち1割のタスクが半分の時間以内で終わるということです。
またベータでは、その職業のタスクの50%が影響を受ける職業は約2割とされています。ただしゼータの段階になると、もっと多くのタスクが効率化していきますので、大規模言語モデルの影響は大きくなります。その職業のタスクの50%が影響を受ける職業は約6割と予想されています。
ここまで大きな影響があるため、大規模言語モデルであるGPTは汎用技術であるというのが著者らの主張です。
私としてはコンピュータやインターネットほどの基幹技術とまではいかなくとも、大規模言語モデルはいろいろなソフトウェアに組み込まれ、生成AIを使っているとは思っていなくとも実は裏側で生成AIが動いているほどまでには普及するとみています。
・ブリニョルフソン、エリック/アンドリュー・マカフィー(2013)『機械との競争』(村井章子訳)、日経BP社
・松岡聡・クロサカタツヤ・西村啓太(2023)「〝「富岳」×生成AI〟で生まれる技術革新や応用可能性」(2024年5月31日アクセス)
・Arntz, M., T. Gregory, and U. Zierahn (2016). “The Risk of Automation for Jobs in OECD Countries” OECD Social, Employment and Migration Working Papers, 189
・Domo (2022) “Data Never Sleeps 10.0”(accessed 2024-05-31)
・Eloundou, T., S. Manning, P. Mishkin , and D. Rock (2023) “GPTs are GPTs”(accessed 2024-05-31)